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富樫って誰かって?
フツーに説明すると、大学の同期で。
ちゃんと説明すると、オカルト研在籍中の変人で。
好意的に言うとオタッキーな友達で。
本音を言うと少々ウザい。
だから。
富樫が満面の笑みを浮かべ、地下鉄のドアから駆け込んできた時。
俺は速攻、前言を撤回する。
こら。
地下鉄駅員。
こんな奴に乗車権与えちゃダメだろーが。
「お疲れ〜、三国!」
「いや、別に疲れてねーし?」
「何でお前そうノリ悪いのよ?」
「前から言おうと思ってたんだけどさ…」
俺がそう言いかけても、富樫は完全無視。
出っ歯のメガネ面を、俺にすりつけてくる。
マジきもい。
「てか、最近どうよ? ユーレイちゃん、見えてる?」
アホ。
言うか? このタイミングで。
しかも。
周囲の人、さり気にこっち見てっし。
さらに。
富樫の向こう側には、しっかり優香タン、いやユーレイタンがいて。
俺とばっちり目が合っちゃうし。
もう何とかしてくれって状態で…
ん?
てことは。
南北線にも出没すんのね?
てか。
やっぱ彼女は俺のこと見てんのね?
いやん。
ひょっとして。
惚れられちゃった、俺?
…んな訳ねーか。
@ @ @
ウツロな視線をさまよわせてる俺に気付いて。
富樫も背後を振り返る。
そしたら何と。
優香タン(←仮名)、笑顔で手を振るじゃねーの。
ちょ。
やべ。
マジ可愛いんですけど?
な〜んて思ってると。
富樫はヘンな顔をいっそうヘンにして、俺に向き直る。
「何か見えてんの?」
「お前、見えねーの?」
「見えてるよ」
「どんなんが?」
俺がそう突っ込むと。
奴はもういっぺん振り返る。
優香タン(仮名)はまた手を振ってくれる。
ヤバい。
何か、ヤバい。
超可愛いんですけど?
で。
富樫はまたまた俺に向き直って。
余裕の笑みをかましながら、こう言い放ちやがった。
「…あの、窓んとこにいる。品の良さそうな婆ちゃんだろう?」
…。
テメー、ほんっと嘘ツキだな?
おまけに、空気まで読めねーとくる…