表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/44

28

そっからまた歩いて、部屋まで戻んだけど。

俺は落ち込み継続中。

だって、しゃーねーべ?

言うしかねーべ? あのシチュエーション。

でないとまゆちゃん、明日までずーっと一人でいるんだし。

一人で悶々としてんだし。

幾ら相手がユーレイさんだからって。

俺のせいで、そーゆー思いさせたくねーし。

中途半端なまま、終わらせたくねーし。

中途半端だったとしても、余計なこと考えさせたくねーし。

だから、しゃーねーのよ。

ああするしかなかったの。

でないと俺の方が悶々としちまうもん。

明日地下鉄に乗るまでの間、ずーっと。





途中にあるコンビニ寄って、カップ焼きそばと牛乳買って。

アパート帰って、鍵開けて、電気点けて。

念のため確認に行くと、例の手はまだそこにあった。

半透明のまま、ちょっと握り加減の状態で。

最初見た時はかなりビビったけど、今はそーでもない。

これが、まゆちゃんの手だって判ったし。

悪いことしないって判ったし。

夜中に動き出したりしないってことも判ったから。



台所でお湯沸かして、カップ焼きそば作って。

ふと思いついて、窓ハンド(仮名)をタオルごと移動する。

テーブルの上にそれ置いて、焼きそば食いつつ眺めてたんだけど。

見れば見るほど、シュールな感じ。

うーん。

あらためて思ったけど。

俺って意外と、ユーレイ耐性あんのな?



それにしても。

ケロロの件、どうしよう?

とりあえず、俺のだってことにしておけばいいんだろうな。

一番波風立たん方法ってことで。

そーだ。

そーしよっと。





飯食い終わってから、シャワーして。

明日の予習はとりあえずほっといて、ベッドに潜り込む。

窓ハンド(仮名)もいちおー、枕元に移動して、と。


電気消したあと。

横向きの状態で、その手眺めてたんだけど。

何だか、胸がずきずきした。

これって何だ?

罪悪感?

まゆちゃんにウソついてることの?

いや、ちげー。

まゆちゃんが、俺のせいで事故に遭ったってこと。

その事実に対する、何ていうか、やりきれなさっての?

何だか、すっげーもやもやするんだけど。

そのもやもやを上手く説明出来ない自分にイラっとしたり。

ほんと。

知らなきゃ知らないで俺、恐らく、一生面白おかしく生きていけるタイプなのに。

明日のバイトのことぐれーしか、心配しなくて済んだ筈なのに。

やれやれ。

何でまたこんなことに巻き込まれちゃったんだろう?





…な〜んて思ってるうちに。

いつの間にか、寝ちゃったらしい。

でもっていつの間にか、夢の中にいた。

しかも。

誰かの記憶を辿ってる感じの夢。




言いたかねーけど。


これってさ。







多分、まゆちゃんの記憶だ。







     @  @  @






夢の中で。

俺は、東西線のホームに立ってる。

周囲には、沢山の人。

丁度混む時間帯っぽい。


で。

俺はずっと俯いて、黄色い線と睨めっこしてんだけど。

ふと開いた左手は、何だかちっちゃくて。

自分の手とは思えなかった。

ピンク色のカバンには、いろんなキーホルダーがついてて。

その中から何故か、ケロロを外す。

でもって。

俺はそれを、ずーーーっと眺めてる。

周りがやけにがやがやしてきたことにも気付かずに。


それから、視線は向かいのホームに向けられて。

そっちにも人がいっぱいいる。

リーマンやら、学生やら、その他大勢。

そのうち、新さっぽろ行きの電車が来て。

そこからも、ぞろぞろ人が降りてくる。

中身も大体同じ。

リーマンや、学生みたいな若い連中。



最初俺は、そいつらをぼーっと眺めてたんだけど。

あるところで、視線はぴたりと止まって。

それから、デジカメみてーにズームする。

ホームを歩いてるのは、二人の大学生。

小さくてよく見えねーけど。

左側の背の高いのが…



あれ?


ひょっとして、安西か?

あの朝たまたま、同じ車両で出くわした。




だとすると、その隣って…



…。



……。



あれ?




ヘインズの白Tに緑チェックのネルシャツ。

垢抜けねーぼさぼさ頭に、505のジーンズ。

靴紐の解けたナイキのスニーカー。



…。




うー。

マジかよ。

あれ、俺じゃん?

ってことは、これは…




って思ってたら。

俺、何故か歩き出す。

俺が向かってる方へ。

多分、追いかけようとしたのかな?

途中の連絡通路のあたりまで。

そこへ。

電車が入りますのアナウンス。

俺、まだ歩いてる。

俺の方ずーっと注視しながら。

そこへ。

向こう側から、誰かが走ってきて。


突然、ふわりと体が浮いて。

そのまま、背中から叩きつけられて。

向こうから、眩いライトが迫ってきて。

車輪が強烈に軋む音がして。

うわ、ヤバいっ! って目を閉じた瞬間。












不意に。

出し抜けに、記憶はなくなった。

てか、戻ってきた。

安穏とした俺の朝に。

平和極まりない俺のベッドの中に。




そんなんで。

目は覚めたけど。

イヤってほどばっちり覚めたけど。

そこまでせんでもって感じで覚めたけど。

俺は起きる気力もなくなって。

ひたすら、ぼーっとしてた。

やっぱりなって気持ちと、嘘だろう? って気持ちのまま。

ぼーっとしつつ、天井眺めてた。



妙な夢ん中で、あらためて判ったことだけど。

まゆちゃん、俺にあれ渡そうとして。

じゃなくても、何とか声をかけようとして。



つまり。



俺の推論は、ばっちり当たってたってことで。




あー。


どうしましょう?

どうしようかしら?

このめくるめく罪悪感を。

ちげー。

この前代未聞の凹みっぷりを。




でもって、どうしよう。

ケロロと、この手と、まゆちゃんと。

まだ、アイテム全部揃ってねー気がするけど。


はぁ。

また最初っから、考えていかなきゃいけねーなぁ…

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ