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真夜中。

何でか知らないけど、ケータイ鳴ってる。

しかも、俺の耳元で。


ぶーん。


ぶーん。


マナーモードにしっ放しだったっけなと思って、うつ伏せのままもぞもぞ手動かして。

やっと掴んでみたものの、何か違う。


ん?

てかこれ、俺のじゃねーし。


何この、オレンジのケータイ?


でもさ。

何だか出なきゃいけないよーな気がして。

ぱかっと開けて、通話ボタン押してみる。



最初は無音。




でもよくよく耳澄ませると、ごーんごーんって、低い音が聞こえてくる。

あ?

何これ?

乗り物みてーだけど。



…。


……。





あの。


…ひょっとして、地下鉄?





それに気付いて、ちょっとだけ戻ってくる俺の意識。

ガッデムだべ。

ジーザスだべ。

無視して寝ちまえばいいものを。

お前ホント気がきかねー。

何でこのタイミングで正気に戻るかな?



まあいいや。

ほら。

言ってみ。

何か伝えたいんでしょ、俺に。

聞いてあげるから。

何でも言ってみ、にーさんに。

今なら配送料負担でご奉仕中だから。




でも。

ケータイの向こうはあくまで沈黙。

マジで?

何か言いなよ。

俺、もう開き直ってるから。

だってここ、札幌だもん。

何が起きてもおかしくねー場所だもん。



って思ってたら。

やっと、ハンノーあり。

予想通り、可愛い声がこう言ったんだ。

ちょっとだけ、遠慮がちに。




「…三国、くん ―― ?」






     @  @  @






「あっ、はい!!」


緊張のあまり。

これでもかってかんじのでかい声で返事した俺。

でも。

そこはベッドじゃなく、大教室で。

みんなの冷た〜い視線が、四方八方から集まってくる訳。



…わぉ。

ひょっとして。

またやっちまった、俺?




「ちょ、何でそんなおっきい声出すの!」


俺のこと(とが)める一方で、周囲にすみませんすみませんってアタマ下げてるコ。

なーんだよ、杉本か。

オカルト研一年、唯一の女子だけど。

どちらかとゆーと、こいつのカオの方がオカルト。

いや。

念のため弁解しとくけど。

俺じゃなくてね、みんなが言ってんの。


「てか、講義中に声かける方が悪いべや?」


目擦りながらそう言うと。

杉本はややずり落ち気味のメガネを上げながら囁いた。


「あのね。講義中に熟睡してる方がどうかと思うけど?」


「しょーがないべ。眠れなかったんだから」


「てか、ヨダレ拭きなよ。きったないなー」


げっ。

そう来たか。


慌てて口を拭う俺。

やべーやべー。

何よこの展開?

超カッコ悪い。


「…で、何か用?」


「あ、そうそう。富樫くんからメール来て。帰り部室にカオ出してって」


「はぁ? 俺、用事あんだけど?」


「久々に上映会やるらしいから。メール行ってない?」


「…あ」


「ん?」


「ケータイ、忘れてきたかも」


「マジで?」


「うん。多分あいつのメール読むなっていう神の啓示が」


「何言ってんの。とりあえず来てね。みんな待ってんだから!」


「いや、だからやることあるって言ってるっしょう?」


と、再度抗議したところで。

杉本は聞きもせず、さっさと席移りやがる。

生意気にも、こいつにはちゃんと彼氏がいて。

講義中もいつも一緒に座ってやがる。

これがまたオカルトくせーカオの彼氏なんだけど。

何故かそういう同士がカップルになんだよな。


俺なんかこんなに地道に生きてんのに。

もうちょっとで、彼女いない歴20年になっちまう。

だからさ。

世の中、ほんとどーかしてると思うよ、ったく…

 

 

 

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