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とは言っても。
そこは俺、所詮乙女座B。
筋金入りのヘタレなもんで。
触ってみたい気持ちはあるけど、指が全然動かねー。
すぐ隣に、まゆちゃんいるのに。
俺のこと、にこにこして見てるってのに。
あーやだやだ。
どんだけヘタレなのよ、俺?
そんな俺に愛想を尽かすこともなく。
まゆちゃんは、そっと手を伸ばしてくれる。
え?
何?
それって、ヤバくね?
だってさ。
俺、ふつーに、手とか握られてるし?
てか。
彼女の方から、俺に触ってくれてるし?
そのことに気付いて、ますます硬直する俺。
でも、怖いとは思わない。
だって、まゆちゃんだもん。
ユーレイだとしても。
会いたいってずっと思ってた子なんだから。
そうこうしてる間に、地下鉄はぐんぐん走って。
南郷13丁目に到着しちまう。
ホームには何人か人がいる。
くそ。
来るな客。
頼むから。
ちょっと空気読め。
なーんて祈る必要もなく。
皆何故か、俺のいる車両を避けていく。
ん?
何で?
まゆちゃん、何かした?
それとも、俺がいくないの?
再び閉まったドア。
ちょっとほっとして、まゆちゃんを見返すと。
彼女も、にっこりしてくれる。
あー。
何となく判った。
最初俺、嫌われたのかと思ってたけど。
こういうことだって。
つまり、その。
ねえ。
そういうことだよね?
…要するに。
二人っきりになりたかったんだよね?
@ @ @
地下鉄がぐんぐん走り出したあと。
あらためて、まゆちゃんと向かい合う。
さて。
何言おう。
何て話そう。
その間。
俺、結構必死。
何気に必死。
ごちゃごちゃした頭、必死に働かせて。
何話せばいいか、必死に探ってる。
あ゛ーーーーーっっ、もうっっっ!!!
今思えば、俺っていっつもこう。
肝心な時になると、何も喋れなくなって。
あとでいっつも悔しい思いすんの。
だから、口ゲンカも負けっ放し。
チャットも苦手。
何かを整理しながら話すとか、まず不可能だし。
てか。
こんだけ俺がテンパってるってこと、彼女判ってるんだろーか?
少しは判ってくれてるんだろーか?
俺がぱくぱく口を開いたり閉じたりしてるのを。
まゆちゃんは、黙って待ってくれてる。
ちょっと首を、右側に傾げたぐらいにして。
さらさらの髪が、揺れるぐらいにして。
ああ。
もう無理。
もうダメ、俺。
萌え死ぬ。
マジで萌え死ぬ。
こんな可愛いコ前にして、何にも出来ないくせに。
そういうとこだけは、ソッコー反応するんだわ。
言葉なんか出てこないから。
俺、いい加減諦めて。
必死にテレパシー送ってみる。
笑うなって。
必死なんだから。
だって相手、ユーレイなんだから。
しかも、めっちゃ可愛いコなんだから。
俺のこと今笑ってるだろーけど。
お宅だってきっとこうなるって。
…あのー。
ひょっとして、本間まゆさん?
って訊いてみると。
彼女、こくんって頷いてくれる。
はにかんだ微笑み浮かべつつ。
あのさ。
判る?
この、こくんって感じ。
可憐っての?
いかにも女のコっての?
マジやべーって。
俺、初めてかもしんない。
リアルで見たの。
女のコがこんな頷き方するのって。
アニメの世界だけだと思ってた。
てか。
こんなとこにいちいちはんのーしちゃうから。
俺の話、全っ然進まねー。
ごめんね皆様。
イラっとさせて。
でも、一番イラっとしてるの俺だから。
一人でテンパってるのも俺だから。
初心者マーク頑張れよってことで。
も、ちょい、我慢してやって。