表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/44

10

その事実に気付いた俺。

速攻、ケータイ取り出して。

アホ富樫に電話する。

端っこの座席のオバハンが何気にイヤ〜な顔して見てるけど。

公共のマナーも空気読め的視線も判ってるけど。

ぶっちゃけ俺、今、それどこじゃねーのよ。

ちょっと大変なことになってんのよ。



「ふぁーい。どうした?」


気の抜けたアホ声で富樫が言う。

俺はちょいイラっとした。


「いやさ、お前、ほら、アレ覚えてる?」


「あ〜?」


「だからアレさ、アレ!」


「意味判んね。ちゃんと日本語喋れ」


「あー、だからほら、あの、オカルト研に入部希望者来たことあんじゃん?」


「は? んなことあったっけ?」


「あったって! で、覚えてねー?」


「何を?」


「それが、女の子だって。騒ぎになったじゃね?」


しばしの沈黙。

その間に、東札幌着。

オバハンなおも怪訝な目を向けて下車。

お陰でこの車両は俺のもんになった。

んで。

正々堂々と喚くことにした。


「あー、はいはい! あったね〜、そんなことも!」


「遠い目してる場合じゃねー。名前覚えてね?」


「覚えてる訳ねーだろ?」


「はっ? テメー本気でそういうこと言う?」


「だってあれいつの話よ?去年の暮れじゃね?」


「かもしんねーけど。覚えてね? 名前とか、学年とか」


「学年は同じだったと思ったな、確か」


「で、名前は?」


「知らん」


「マジで?」


「マジで知らん」


「いや、覚えてる筈だって!」


「知らんもんは知らん」


いや。

もうダメ。

マジ使えねー、こいつ。


「てかさ。何で今更そんなこと言ってんの?」


「ちょっと今ぴんと来たんだよ。それで…」


「俺に電話するより、部室行って名簿見た方が早いんじゃね?」


「いや、だから。今すぐ知りたいん……」


言ってる傍に。

あいつ、ばっつり切りやがる。

だから。

切れたケータイ見詰めながら、俺ボーゼン。

うわー。

何やってんだよ、こいつ。

人が困ってんのに、そういう態度取るか普通?

最悪だな。

全く。

死ねばいーのに。

 

 

 

 

 

     @  @  @






はぁ。

俺、不機嫌。

マジ不機嫌。

富樫はアホだし、まゆちゃんには会えないし。

このまま新札幌まで行っちまおうかと思うぐらい不機嫌。


じゃあさ。

あれは一体何だった訳?

俺のカバンに入ってた奴。

それと。

地下鉄乗るたんびに見えるあれ。

何あれ?

俺、そんなもんに振り回されてた訳?



何かすっかり馬鹿馬鹿しくなって。

両足、前に投げ出したくらいにして。

俺、完全に怒っちゃった。

怒ったってか、何かもうどうでも良くなった。

はぁ。

何やってんの、俺?

どうしちゃったの?

マジでおかしくなったんじゃね?




考えてみればさ。

考えるまでもないんだけどさ。

どんだけ可愛いったって、ユーレイはユーレイじゃん。

いや。

もし仮に、まゆちゃんがそうだとしたらって話。

てか。

俺のユーレイ歴からいくと、確実そうなんだけど。

だとしたらさ。

デートにも誘えないじゃん?

告白どころか、キスもなし。

しかも彼女、どういう訳か地下鉄からは出らんないみたいだし。

そしたらさ。

好きになっても意味なくね?

てか。

そんなのを好きになった俺が、ちょっとどうかしてんじゃん?





もういい。

やめよ。

アパート帰って速攻寝よう。

疲れてんの、俺。

あんなもんお持ち帰りしてからずっと。

だから。

あれ、もう捨てちまおう。

気に入ってたカバンだけど。

ユーズドの分際で、8000円もしたカバンだけど。

ユーレイごと捨てちまおう。

呪われそうだし。

気味悪いし。

鮮度も落ちただろーし。

いい加減、賞味期限も過ぎただろーし…

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ