リエル、左遷される
新作です。よろしくお願いいたします。
〈リエル・ステッガー中級騎士、この者をアゼエル地方支部への転勤を命ず〉
掲示板にでっかく貼り出された辞令を見て俺リエル・ステッガーは呆然としていた。
アゼエル地方と言えばこのライアム王国の中でも辺境中の辺境と言われていて今まで騎士が派遣される事なんてなかった。
そんな場所に行かされるなんて、これは何かの苛めだし報復かなんかだ。
だが、俺は今まで真面目に勤務してきたし勿論上司に逆らった事なんて無いし‼️反感を買われる事なんてやった事なんか無い!
俺はすぐに上司である隊長の元に向かった。
「隊長! どういう事ですかっ!? どうして俺がアゼエル地方に転勤なんですかっ!?」
「落ち着け、リエル。 ちゃんと説明するから。 ……今回の件は俺も寝耳に水の話なんだ。 俺の元に届いた時は既に上層部の了承が得てどうしようもない状態だったんだ」
「だから、どうしてですかっ!?」
「実は前からアゼエル地方を治める領主から騎士を派遣してくれ、と言う願いが出ていたんだ。 だが上層部は無視をしていたんだ」
「なんで無視していたんですか?」
「一地方貴族の言う事よりも王族や都市貴族の方が大事だった、と言う事だろう。 だが、そうもいかなくなった自体が起きてしまったんだ」
「……もしかして魔獣ですか?」
「あぁ、魔獣の活動が活発化していて特にアゼエル地方では近隣の村では被害が出ている。 それで漸く上層部が重い腰をあげたんだ。 そして選定の結果、お前に決まったんだ」
「だから、なんで俺なんですかっ!? しかも一人ってっ!?」
「……非常に言いにくい事なんだが、一つはお前が平民である事、もう一つは独身である事だ」
聞いた瞬間、ガクッと膝から崩れ落ちてしまった。
いや、なんとなくわかってたよ。
俺は地方の小さな田舎村から騎士になる為に王都にやって来た。
子供の頃から英雄譚に憧れていた俺は騎士になる為に鍛練をしていた。
十歳の時に騎士になる為の学校に入学し王立騎士団に正式に入隊したのは十五才の時、そして三年間コツコツとやって来た。
勿論、婚活にも手を出したけど結局、貴族やイケメンばっかりチヤホヤされて俺なんて相手もしてくれなかった。
俺と同期の奴等はみんな婚約者や彼女がいる。
「まぁ、向こうにも村や町があるし出会いだってあるから落ち込むな。 それに向こうで手柄を立てれば貴族籍をもらえるかもしれないぞ」
「そんなの本当に英雄にならなきゃ無理ですよ……」
ドヨーンとした空気を漂いながら俺は隊長室を後にした。
こうして俺は一人アゼエル地方へと旅立った。