強者の決闘
「冗談じゃ、、ないのよ」
目の前に広がる光景にフィーリアは、地に膝をつけるかの様に落胆する。
「ははっ、テメーの目に映る世界が冗談に見えるなら、その目は役立たずと言う事になるわけで、アタシがテメーの目ん玉をかっぽじって土の肥にしてやっても良いって奴ですよ。その方が世のため人のため地球のためっね」
「強欲に溺れた女ほど、見苦しいものはないのよ。こんな事が曲がり通ると思っているとでも言うのかしら? この弱虫」
「ははっ、言ってくれあがるじゃないですか、このマセガキと激マブのハーフ!」
こんな感じに、小学校で言う所の、(お前ばーか)(は? 馬鹿って言う方が馬鹿なんですー)と言うのと、同等の論争が繰り広げられる。
しかし、そんな論争に見合わない風格を持つ、二人。お互い、睨み合うだけの静かな時間だけが流れる。否、睨み合いだけでは無い。その静かな睨み合いには波ひとつ立たない静寂があり、しかしその中には、一度目を向ければその状況から目が離せなくなる程の強い存在感がある。尊厳や、貫禄さえも感じられる程だ。如何ほどに二人がこの世界で規格外の存在か見て取れる。
この睨み合いは、凡才程度の実力者ならただただ時間を浪費しているように見えるかもしれ無いが、実際は違う。非凡中の非凡。天才を超越する真の強者のみ理解出来る絶対的領域。時間。相手を良く観察し、一瞬の気の迷いすら許されないその領域は言わは根比べの様な物。しかしながら、根比べなどと、気の抜けた表現は間違いとも言える。それだけ、この睨み合いには意味があり、力があるのだ。
瞬間。ルペウスの右手が力が抜ける。いわゆる油断だ。その刹那の油断を見逃さないフィーリアは、奇襲や、先制攻撃と表現されてもおかしくない攻撃を仕掛ける。
生半可な鍛錬では身につくの事の無い。今、自分に出来る最高で最速の動き、型とも言えるその繊細、精妙、精巧の極地に立つその動きから放たれるボールはまるで、鷹が獲物を狩るように、真っ直ぐで、力強く、滑らかに飛ぶ鷹にも見える。
それに対してルペウスは、天才的。いや、超人的な動きで受けの構えに入る。しかし、ルペウスは一瞬の"油断"と言う大き過ぎるハンデを受けているが、そのハンデをもろともしないその動き、判断力は流石と言う評価が一番似合うだろう。
フィーリアの右腕が振りかざす。その瞬間、この世界の音や光。傍観者の目がそれに従うように集められる。そうして上がった右腕とボールをフィーリアは、地面を叩く様にして振り切る。その一秒にも満たない動きの中にフィーリアは一体どれだけの感情を抱いたか、他人にはどうにも推し量る事は出来ない。
それに負けず劣らすのルペウスの受けは、フィーリアが投げるボールが迫り来るのをじっと見つめる。そして両手を構える。少しでも掴む動作を誤ると、その反動で上手く掴めず跳ね返ってしまう。この闘いに置いて、この手のミスは絶対に許されない。だからこそ、受け身は投げるよりも、より高い集中力と緻密な計算が必要となる。
そうして勝負の結果は、
「勝者。入れない組!」
そう審判が言った瞬間。熱と音の区別がつかないほど大きな歓声が上がった。
「嘘だ! 欺瞞だ!」
「嘘じゃ無いわね、しっかり現実を見るがいいのよ」
「こんなのおかしい! ステーキに人参のグラッセを入れない無いなんて、ステーキじゃない! 別の料理に成り下がってしまう訳で」
「ふん、なんとでも言えば良いわ。勝ち組はいつの時代も甘く煮込んだ人参なんて食べ無いのよ。いい加減、認めるのよ。ルペウス」
「こんなの嘘だーーーーーーーーーーーーーーー!!」
補足。
フィーリアとルペウスがやっていた勝負はただのドッチボールです。
分かりずらくてごめんなさい。




