厭世遠征
新年早々。
「如何にか、明白な変化を心待ちにしている。
其んな適当な阿呆共に告ぐ。
通学路を通っている。
言葉だけの阿呆共。
手前ら普段何もしない癖に何を待ってんだ?
変化を望むなら其成りの覚悟を持って、汗水垂らして精一杯働いて来い!
無料or無償で何かが獲られる等、美味な話が有ると何故思えるんだ?
口を上に向けて、開け閉めして居れば餌が貰えると思っている温室育ちの野菜共じゃ有るまいし、変化ぐらい自分で起こしやがれ!
此んな世界、芥子飛んでしまえ!」
拡声器を通した爆声が、脳味噌を揺るがした。
煙草の紫煙が燻り燻らされ、寒空に煽られ千切られていく。
間抜けな顔して聴いていた木は、思わず着火器を取り落とす。
叫びを挙げた青年が、屋上の柵から飛び出した。
止めに行こうにも間に合わない。
声を挙げても決して届かない。
遠い、悠い、距離が在る。
炸裂。
血肉が広がる猟奇的。或いは気持ち悪さ。
吐き気が延延と込み上げて来る。
冷え切った汗が転転と地面に落ちる。
野次馬が屍体を撮す。
狂気が染み込んでいると然思えない。
頭が壊れている。
彼の青年の言う通り、此の世界は狂っている。
人の死を慮る輩は疾うに居ない。
誰も彼もが下衆と馬鹿。阿呆と惚けと腐れ外道。
嗚呼、何も何も終わっている!
人の死を曝す様な人は既に人では無い。それは悪鬼羅刹の類。
幽霊には尊厳は無いのか!?
今世は棄て。
来世も棄て。
輪廻転生等したくもない!
此の様な人世に、二度と産まれたくも無い!
僕は感化され、窓を突き破り飛び降りた。