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死にゆく場所
そこでは、みんな死ぬ。
理由はわからない。何か恐ろしい事件があったわけでもない、ただの土地。
けれど、そこに住んだものは速い者は一週間、遅い者は三年で死ぬ。そして死に方は一様に、まるで夜眠るときのように、穏やかに死ぬ。どんなに若い者でも、ある日突然電池が切れたかのように、うたた寝から目覚めない。
人間だけではない。動物も、虫も、妖精さんだって、そこでは同じようになる。
そこは、そういう土地。
「……あれ?」
私は、更地となっていた“そこ“で工事が行われていることに気付いた。みんな穏やかに死んでしまう場所。理由は人間も、その土地の近くに住む妖精さんだって知らない、不思議なところ。
「こんにちは」
「おや、こんにちは」
工事の様子を眺めていた中年の男性に挨拶をした。
「何か建つみたいですね」
「ああ。私が建てるんだ」
「何ができるんですか?」
男性は、微笑んだ。
「なあに、老人ホームを建ててみようかなとね……」




