呪い
私には霊感がある。
5丁目の廃墟の裏庭には、羽根が生えた妖精さんたちがたくさん住んでいる。羽根以外は人間に似てるけど、大きさは人間の人差し指くらい。そんな『いかにも』な妖精さんたちはお茶会が大好きで、花の蜜が詰まったパイや薄い黄緑色のお茶を持ち寄って、いつもいつもおしゃべりをしている。
「こんにちは、お茶会の妖精さん」
『あら、大きなお嬢さん、ごきげんよう』
「今日のお菓子も美味しそうな匂いだね。そこに干してあるのも料理に使うものなの?」
私は妖精さんの生活に興味津々だ。同じ世界に生きているのに、人間と違う生活をしている妖精さんのお話を聞くのは面白いのからだ。同時に妖精さんも人間の生活に興味があるようで、よくお互いの生活について話したりするのだ。
『いいえ。あれは脱皮した羽根よ。私たちは成長期に一度羽根が脱皮するの。干して砕いて薬草と一緒に混ぜると、よく効く傷薬になるのよ』
「へえ、妖精さんも脱皮するのね」
『そういえば、私、昨日神社の裏で変なお人形を見たわ! あれはなんなのかしら。教えてくださらない』
「変なお人形?」
『ええ、藁で作ったお人形。それが杉の木に釘で打ち付けられてたの』
「それは呪いの藁人形だね。お人形を用意して、中に嫌いな人の髪の毛や爪を入れて木に打ち付けると、嫌いな人が不幸になるの」
『まあ! まあ! なんて恐ろしい!』
妖精さんたちはきゃあきゃあ叫ぶ。でもどこか楽しそう。それは人間の少女が怖い話をするときの雰囲気にそっくりだった。
人間と妖精さん、生活の仕方は違うけれどそれでもどこか、似通ってくるところはあるんだなと思った。
本物の藁人形というものを見てみたかったので、後日私は妖精さんから教えてもらった神社の裏手に行ってみた。鬱蒼とした森の奥の方に、たしかに藁人形が打ち付けられている木があった。本当にこんなことする人、いるんだなあ、と思ってしげしげと眺めていると、藁人形の近くにもう一つ別の人形が打ち付けられているのを見つけた。
それは私の指の爪くらいのとてもとても小さな人形で、見た目は藁人形にそっくりだけど、藁よりももっとか細い、糸のようなもので作られた人形だった。
私は好奇心で藁人形ならぬ糸人形の中を探ってみる。その中にあったのは髪の毛でもなく爪でもなく、乾燥した妖精さんの羽根だった。