表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/548

感染

 今日も通勤電車は、満員電車。


(きつい……)

 満員電車なんていつものことだけど、今日はいつもよりさらに人が多い。大雨で、ここが地下鉄なせいなんだろうか。

(まったく……)

 とはいえどうすることもできずに、ただ電車に揺られていたが、ふと人混みの中から、声が聞こえた。

「死ね死ね死ね死ね死ね……」

(うわ……)

 そう呟いているのは近くにいた中年の男だった。目は焦点が合わずに、口だけが動いてひたすらそう言っている。

(朝からキチガイといっしょかよ)

 そう考えて暗澹とした気持ちになったが、男性はふと呟くのをやめた。 

「死ね死ね死ね死ね死ね……」

(え?)

 次にそう呟き始めたのは、男性の隣にいた、若い女だった。さっきまでは、嫌そうな顔で男性を睨んでいたのに、今ではすっかり男性と同様に焦点の合わない目でひたすら呟いている。

(え?)

 戸惑っていると、女性も急に呟くのをやめた。そして女性の隣にいた男子高校生が、さっきまでは熱心にスマホを見ていたのに、急に目の焦点が合わなくなり、口が動いた。

「死ね死ね死ね死ね死ね……」

(ちょっ……!)

 男子高校生は、俺の隣にいる。

『*****駅────*****駅────』

「!」

 駅に到着して、弾かれるように電車を出た。

(なんだったんだあれ!)

 まるで感染しているかのようだった。気味が悪くてもうあの地下鉄には乗りたくない。そんな気持ちで職場に到着し、あいさつをする。

「おはようございま────」

「死ね死ね死ね死ね死ね……」

 隣の席の先輩が、焦点の合わない目でそうつぶやき始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ