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うらやましい

 私には霊感がある。


「妖精ってさぁ、仕事とかしてんの?」

 普段痛い子とか言われがちな私の霊感ことを信じてくれる人も少しはいる。クラスメイトの不動くんはその一人だ。

「仕事?」

「三島は妖精さんとやらと仲良しなんだろ? 妖精さんにもサラリーマンとかいんの?」

 テスト前の図書室での勉強会。飽きたのか、不動くんはそんなことを聞いてきた。

「サラリーマンというか……お仕事は、木の実や花の蜜を採ってきたり、狩りをしたり、木こりをしたりしてるよ」

「いいねぇ牧歌的で。俺らみたいに金のためにストレス社会の荒波に揉まれる必要がないじゃん」

 クルクルと、シャーペンを手で回す。

「毎日のんびりできそうでいいよな。人間よりも幸せだろうな」

「そうかな」

「そうなんじゃねえの?」

 不動くんは、ハハハと笑う。


 帰り道、家の近くで、妖精さんが首を吊っていた。

「こんにちは、青い目の妖精さん」

『こんにちは……良くないものを見せてしまったわね』

 首を吊っている妖精さんの目は濁っていて、首は伸びきってしまっている。他にも青い目の妖精さんがたくさん集まってみんなで協力して下ろそうとしているが、高いところで吊ったせいか難航しているようだ。

 高いところ、といっても手のひらサイズの妖精さんにとっての高いところ。私は遺体をひょいとつまみあげると妖精さんに引き渡して。

『ありがとう。苦労してたのよ』

「どういたしまして。でもなんで首を吊ったんだろう」

『遺書があったわ。年を取ったからよ』

「年を取ったから?」

『この人は独身で面倒を見てくれる子供もいないから、年を取って自分で食糧をとれなくなったら飢え死にするだけなの。それが嫌で自殺したのよ。私たちの一族ではよくあることだわ』

「……………」

『ニンゲンはいいわよねぇ……年寄りになってもロージンホーム?ってところに行けば死ぬまで面倒見てくれるんでしょう?』

「そうだね。お金は必要だけど」

『知ってるわ。そのオカネってやつは、仕事をしたら貰えるやつでしょう。そしてわざわざ狩りをしなくても、そのオカネってやつを持ってれば、食べ物と交換できるんでしょう? しかも土日は仕事をせずに一日中遊んでも十分暮らせるらしいじゃない! 

 私たちの一族でそんなことしたらあっという間に食べ物がなくなってしまうわ。うらやましい』

「…………」

『毎日あくせく働いて食べ物の心配をしなくていいなんて、私たちよりずっと幸せでしょうね』

「そうかな」

『きっとそうよ』

 うらやましい、と青い目の妖精さんは笑った。

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