呪いの動画
呪いの動画、というものがある。
見ると呪われる……なんてステレオタイプの怪異は、今やYou Tubeにまで進出していた。
「ねえ……もうやめようよ」
「なんで?」
「わ、悪いことだし……」
そんな呪いの動画の一つを制作して投稿している人物と、女は幼馴染であった。様々な事情で世を恨み、オカルトの道に入り込み、そして呪いの動画を作成した幼馴染を止められるのは、昔から唯一仲の良いこの女だけだった。
「だめ。あなたの言うことでもこれは聞けない。大丈夫、あなたは見ても大丈夫なようにしてるから」
「そんなことしても幸せになれないよ!」
「いいよ。私の幸せなんてどうでもいいの。強いていうならコレを見てあなた以外のみんなが不幸になるのが私の幸せ」
「だめだよ!」
「いいのいいの。どうせこんな動画見る奴らなんて、遵法意識の低いろくでなしだし」
動画は一見、ネットのあらゆるところからあつめた不気味な絵を転載してまとめて「見ると呪われる絵画」とタイトルがつけたよくありそうな動画だ。更新が早いチャンネルのせいか人気があり、数万単位の再生がされていている。
その動画が、呪われているとも知らずに。
「ほらすごい再生数。やっぱり世の中なんてクズばかり」
「でも……!」
「もう無理。無料で気軽に楽しみたいって何も考えてない連中に、私の呪いはばらまかれるの」
幼馴染はニィ、と笑う。
「誰も私を、止められない」
笑みを深める幼馴染。女はどうしようとオロオロしていたが、なにかの拍子に、動画を表示しているページが更新された。
「…………あれ?」
*****
「よし、凍結された」
「ん〜?」
不動日陰は三島千花の携帯を覗き込んだ。そこには著作権侵害によりこの動画を停止する旨が書かれている。
「私のイラストを無断で転載して動画にしてたの、この動画」
「許せねぇ」
「もう凍結されたよ」
もう、と三島はため息をついた。
「フォロワー増えてきたのはいいけど、こういうことも起こるんだね……」
「あー、人気出るとなー」
対策しなきゃ、と言いながら、三島は自身のSNSに転載動画が凍結された旨をツイートした。
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