被災
不幸とは、いろいろ種類がある。
災害なんて、その最たるものなのだろう。
自分が*****の出身で*****年に関東に引っ越してきたと伝えると、相手は言葉にはせずとも「あっ」という表情になることがある。当然だ。だって誰でも知っているような災害があったところだから、それが原因でその地にいられずに引っ越してきたことが明白だからだ。
実際その通りだ。私の一家はその災害で家を失って、関東の親戚の家を一時的に間借りしそのままその街で新しい住居を得て生きてきた。引っ越したというよりは流れてきたといったほうが正しいのかもしれない。
私の故郷はめちゃくちゃになった。多数の死人が出て、建物も何もかもだめになった。
私をいじめていた*****ちゃんも。
お母さんに嫌がらせをしていたお隣の*****さんも。
騒音や恐喝でみんなを困らせていた近所の*****さんも。
お父さんが昔勤めていた会社で、自分勝手な経営をしてみんなを困らせていた社長の人も。
みんな。
今は、そんな"みんな"がいない土地で生きている。
あの時期になるとテレビではあの土地でいまだに生きている人や、当時の話を放映したりしている。
あの美しい故郷よもう一度、そんな風に"あの頃"を取り戻そうとがんばっている人たちの姿が映される。
それはいいと思う。土地は悪くないし、あそこに良い思い出がたくさんある人たちだっているのだから。
もっとも、私は多分このまま……関東に、骨を埋めるだろう。
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