自分の親
悪いことをしてしまった。
『許さないぞ』
「ごめんなさい。ごめんなさい」
『いいや、許さないね』
ふざけているうちに、近所にある祠を壊して逃げてしまった。その夜、見知らぬ老人が夢に出てきて、自分を叱責してきたのだ。
『お前にも苦しみを味わわせてやる。お前の親を殺してやろう』
「親は関係ありません!」
『お前を育てたんだから、責任をとってもらうのさ』
えいやっと老人が杖を振ると、夢から醒めた。
しかし、リビングに行くと両親は健在で、朝ごはんのトーストを焼いていた。ああなんだ変な夢だったなと思い一日を過ごすと、夜にまた夢を見た。
『はて、おかしいな。たしかにお前の両親を呪ったのに』
老人は首を傾げている。
『お前、もらわれっ子か? 捨て子か?』
「そ、そんな話聞いたことありません」
『いいや、そうに違いない。実の子供ならお前のあの親たちはもう死んでいるはずなのだから。なんだお前、捨て子、捨て子か。捨てられたのか。哀れだな。ああ、その情けない顔、面白いな』
満足したのか、ひっひ、とたいそう愉しそうな笑みを浮かべて消えていった。
朝、目覚める。古いアルバムをひっくり返すと、やはり小さい自分が両親といっしょに写っている写真がたくさんあった。頬の特徴的な3つのほくろがちゃんと同じ位置にあるから、他人なわけがない。アルバムを遡ると、病院にいる母と赤ん坊の自分も写っている。産まれてからそう経ってないうちに撮られた写真のようだ。
やっぱり実の親じゃないかと思いながらリビングへと行く。今日も相変わらず両親はトーストを焼いてバターやジャムを塗ったものを朝食としている。自分も焼いてないトーストを袋から出して、トースターにセットした。じりじりとパンが焼けていくのを待っていると点いていたテレビの画面が切り替わり、近所の総合病院の映像が映った。ニュースキャスターが淡々と原稿を読む。
『この病院では赤ん坊の取り違えがあったと……』
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