500円玉
道に500円が落ちていた。
それはいい。それだけだったらたまにあることだろう。ただ、その500円は複数落ちていた。一枚、二枚、三枚、四枚、五枚……まるで列に並んでいるかのように、一枚ずつ。まるでゲームで進行方向を示しているコインと同じように、一枚ずつ。
500円玉の列は、曲がり角を曲がってどこかへ伸びている。
拾っていった先に、まるで罠でもあるかのように。
*****
500円を道に置いておくお化けがいる。
「こんにちは」
『ちわ』
ゴムまりに口がついたようなお化け。それらがぴょんぴょん飛び跳ねながら、道に口から出した500円を置いていっている。
「どうしてそんなことをするの?」
『さあ?』
「わからないのにやってるの?」
『だって父さんも爺さんも曾祖父さんもその前もずっとずっとやってるんだ』
話しながらついていくと、500円は誰も手入れをしていないであろう古いお堂に繋がっていた。中には放置されて崩れた仏像のような何かが鎮座している。
『父さんも爺さんも曾祖父さんもその前もその前の前もずっと前から月に一回、これをやってきた。誰が始めたのか、なんでやるかなんて伝わってない』
「…………」
『なあ……これを止めたら、どうなると思う?』
「わかんない」
『そうだよ。だから続けるんだ。無意味かもしれないけどな』
こつ、とまた一枚の硬貨を木の床に置く。
『わからないから、やるのさ。止めて、何か起きたら嫌だからな……』
そう言ってお化けは、また口から硬貨を一枚出した。
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