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水族館の魚

 水族館の水槽の中では、魚がのんびりと泳いでいる。


 私は近くにある案内板と交互に水槽を見つめていた。あれはこの案内の魚、こっちはそこの案内の魚、と頭のなかで示しあわせる。

「何してんの」  

 隣にいた不動くんが小声で聞いてくる。一応他にもお客さんがいるから気を使っているようだ。

「お魚は難しいの」

「難しい?」

「お化けのお魚との区別がつきにくい」

「あ~……」

 目の前の、海の魚を集めた巨大水槽を泳いでいる大きな魚が、小さな魚が、鮮やかな魚が、地味な魚が、それが現実のものなのか"霊感"によって視えているお化けなのか、お魚の知識が浅い私には確信が持てない。昔家族で海に行ったときにやたらキラキラした不思議な形の生き物が浜辺にいたからお化けなのだろうと思ったら、お母さんが「それは毒があるからさわっちゃダメよ」と言ってきて、現実の生き物であることに逆に驚いた。

(あ)

 案内板と水槽を交互に眺めていたが、確信をもって"お化け"だと判断できるものがいた。


 きらきら

 きらきら


 その魚はその水槽の中では一番輝いていた。ライトの光を浴びて、巨大な水の塊の中を優雅に泳ぐ。

 ガラス片、プラスチック、釣糸、石、貝殻、それらの集合体。ガラス片やプラスチック、貝殻は削られて鱗の形になり、釣糸は編まれてヒレとなっている。唇は小さな石の集合体で、目はビー玉に見えた。

 誰かが廃棄したそれ、あるいは川から流れて海に迷いこんだそれらが、綻びなく形を作っている。

 魚のようでいて魚ではないそれは、すぅ、と私の前を横切った。

『私たちも泳いでみたかったのさ』

 小さな声が何十何百と重なっているような、そんな"声"が耳に届いた。

「なんかいた?」

「うん。でも悪いことはしないと思う」

 そろそろ次のコーナーに行こうか、と移動する。最後に一回振り返ると、その"魚"は大きく一回、踊るように旋回した。

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