夢の中では
昔から、よく夢を見た。
夢の中の私はきれいな大人の女の人で、友達とキャンプ場に遊びにきていたときに素敵な男の人と出会ってお付き合いが始まるのだ。
夢を見るたびに素敵なレストランに行って、遊園地で遊んで、映画館に行って、お家でゆっくりして、誕生日には指輪をもらって、出会ったキャンプ場に今度は二人で行って。そういう思い出を積み重ねていって、そして夢の中で三年くらい経ったらまた最初の出会いのシーンに戻る。
小学生の私はきっとこれは予知夢なのだろうと両親に熱っぽく語ると、お母さんはじゃあ行ってみようかと提案してくれた。お父さんはなぜか渋っていたが、休みの日に家族みんなでそこへ遊びに行った。
大人の私と将来の素敵なあの人が出会うのはずっと先の未来の話なので、当然そこに彼はいない。家族三人で普通のキャンプをし、魚釣りのために川へと赴くと、水面が太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。
いや、違う。一つどこか異質な光がある。私が近づくと、白い流木に見覚えがある指輪がひっかかっていた。
夢の中で、貰った指輪。
どうして、と思っていると後ろにいたお母さんが絹を裂くような悲鳴をあげた。
昔昔、私が生まれるよりも前。
キャンプ場にきていたカップルが、行方不明になっていたらしい。現場の様子から、急に天候が悪化して増水した川に飲まれたのだろうと推測されていた。
大人たちの間でいろいろ話し合いがあって、警察もでてきて指輪も返した。しばらくあとに連れていかれた知らない家では、知らないおじいさんとおばあさんからえらく感謝された。
お母さんとお父さんに言われるままにご焼香をした仏壇に備えられていたのは、夢の中での"私"の写真。
その日の帰り道、"前世"という概念を教えて貰った。
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