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中に何も入っていない箱

 何も入っていない箱があった。


 少なくとも、その箱の存在を知っている者は何も入っていないことを知っている。箱の中身を確認したことはないが、知っている。その箱の中には何もない。

 箱は縦20センチ横30センチ高さ15センチの木の箱であり、鍵はついていない。中には何も入っていない。

 中に何も入っていない箱はとある旧家の蔵の奥に安置されている。何も入っていないいない箱だがその家で代々伝わるものではあるために、他の品物といっしょに長年その蔵の中に置かれている。

 その箱の中には何も入っていない。

 何も入っていないため、蓋を開ける者はいない。朝も昼も夜も開ける者はいない。春も夏も秋も冬も蓋を開ける者はいない。中には何も入っていないからだ。

 中に何も入っていない箱のため開ける意味はなく、中に何も入っていない箱を開けるという無意味な行為を避けるために、代々その箱を所持する家はその箱を開ける行為を禁じている。

 箱の中には何も入っていないからだ。そんな無意味な行為は時間の無駄だからである。 

 中に何も入っていない箱であるため、当然無価値である。開ける意味もなければ当然盗む意味もない。一度蔵に泥棒が入りたくさんの財が盗まれたが、無価値ゆえにかその箱だけは後日元の位置に戻されていた。泥棒は捕まっていない。

 泥棒もきれいに元に戻すほど、中に何も入っていない無価値な箱である。開ける意味はない。

 その箱の蓋を開ける意味はない。


 中に何も入っていない箱だからである。



*****


『で、結局なんなのですかそれは』

『"中に何も入っていない箱"だ』

 天からの白い服の使いは回収した箱を見る。神が地上にばらまいてしまったおもちゃの回収部隊は、今日もおもちゃを回収している。

『正確には、この箱を見た物は中身を確認せずとも、"中に何も入っていない"と認識する。我々のような存在以外はな』

『……何かはわかりませんが、入っている気配はしますな』

 白い猫が、ふんふんと箱のにおいを嗅ぐ。

『品目は、"びっくり箱(その1)"だ』

『はあ……たしかに最初から中に何があるとわかっていたら興醒めですな』

 だからと言って周囲の認識を狂わせて、何も入っていないと思わせるというレベルまでやるのがこの箱である。

『で、開くとどうなるんです?』

『不明だ。明確な情報は開示されていない。分かっているのは一覧に書かれているただ一言だけ』

『一言とは?』

『"開けるとすごくびっくりすることが起きる"……だそうだ』

『……開けない方がよろしいかと』

『無論だ。あのお方が自らお作りになったものを俺が易々と使うものか』

『そういう意味では……。ああ、そろそろ時間ですな』

『ああ、次だ次』

 

 むかしむかし、神様がうっかりと落としてしまった不良品のおもちゃたち。動いて楽しく暮らす物もあるけれど、中にはこうして静かに、この世に埋もれているものもあるのであった。

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