謎のボタン
ボタンがあった。
服についているボタンではない。クイズ番組の回答席についていそうな、下に台座がついた丸くて大きいボタンだ。
銀色の横長の台座の上には白地に上を向いた赤い矢印が描かれたものと、白地に下を向いた青い矢印が描かれたものの二種類のボタンがついている。
……朝起きたら枕元にあったが、なぜこんなものがあるかさっぱりわからない。多分ジョークグッズの一種なのだろうが、そんなものを売る店には行ったことがない。
試しに赤い上向きの矢印のほうのボタンを押してみる。音が鳴ったりするかもしれないと思ったが、特に何も起こらない。青い下向きの矢印のボタンも同様だった。では、と長押しをしてみるが、やはり何も起こらない。
……なんだこれ?
「まあいいや」
テキトーな場所に放置して、朝食を用意するためにキッチンへ移動する。作り終えて、1K故のリビング兼寝室へと戻ると、ボタンはなくなっていた。
「あれ?」
見回すと、ボタンの代わりに今度は見慣れない手紙が一つ。
『ごめんね! 間違えて送っちゃった! 反省中のドキドキさんより』
「………………………?」
ドキドキさんとはなんだろうか。なんだこの手紙は。さっきのボタンと関係あるのか?
「……まあいいか」
生来の大雑把さが、そんなわけのわからないものよりもアツアツの朝食を食べることを優先させた。ボタンと手紙も、どうせこの雑然とした部屋のどこかに埋まっていたものがなんかの拍子にでてきたんだろう。そう思いながら、味噌汁をすする。
ピロン、とスマホの通知が鳴る。ちらりと見ると、ニュースアプリからの通知のようだった。
『臨時速報 ビットコイン、原因不明の急激な高騰と暴落により…………』
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