表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
434/548

カーテンの向こう

 部屋のカーテンはずっと閉まったままだ。


 入ってくる西日が強く、遮光カーテンを買ったら快適すぎてずっとそのままになっている。窓の向こうにはベランダすらなく洗濯物をひっかける竿だけがあり、落としたときのことをことを考えると面倒なので洗濯物は脱衣所で乾かしている。

 だから、年単位でカーテンは閉じたままだ。

 そんな部屋での数年の生活も、転職による引っ越しで幕を終える。引っ越しのために片付けていると、ふとカーテンを一度も洗ったことがなかったなと思った。

(今日はくもりだしいいか)

 カーテンを外して、数年ぶりに窓を見る。当然汚れているので、ついでに掃除するかと考えながら、何となく窓を開ける。

 窓の向こうには一応落下防止の柵がある。いかにも安っぽそうなその柵も当然土埃やら雨が乾いた跡やらで汚れている。

「ん?」

 そんな柵に、真新しい手形を見つけた。まるで柵にぶら下がったかのような、きれいな手形。そこだけ汚れはほとんどないので、いやに目立つ。

 ここは三階だ。当然誰かがいたずらでつけられるような場所ではない。

「あー!!!」

 外から子供の声がする。声のする方からは、小学生らしい集団が、こちらに指を差していた。

「お化けの部屋!!!」

「窓開いてる!!!!!」

 お化け? と疑問符を浮かべるが、小学生たちはきゃあきゃあと騒ぎながらあっという間に騒ぎながら散っていった。声はあっという間に遠くになり、残されたのはカーテンを掴んだ自分だけだ。

「えー…………………」

 ここ数年、カーテンに遮られた向こうで何が起こっていたのだろうか?

 独身の一人暮らしにありがちなご近所付き合いゼロといった状況ではその答えを得られるわけもなく、引っ越しまで見なかったことにしようと決めることしか出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ