表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
431/548

だらしない友達

 だらしない友達だった。


 ちょいちょい遅刻はするし服の裾が中途半端にズボンに入ってたりするし寝癖がついていたりする。組立式の家具を説明書とか読まずになんとなくで組み立て始めて「やっぱ無理だわ」って笑ってるようなやつだった。

 ただ話は面白くて明るくて美味い店をたくさん知っていて、とにかく欠点なんか気にならないくらい楽しいやつだった。俺は。

 なかにはあいつはだらしないから付き合いたくないとか言って離れるやつもいた。まあ、遅刻はしないほうがいいし服装や髪型はちゃんとしたほうがいいし、説明書はちゃんと読めとも思う。

 けどやっぱり、友達として楽しいところのほうが強かったからずっといっしょにいた。


「この部屋だっけ?」

「そう」

 そんなあいつと誰も連絡ができなくなった。電話もメールもアプリもSNSも全部ダメ。不安になって、数人の友人と一緒に自宅を訪れることにした。インターフォンを押しても返事はなく、ドアノブを捻るとあっさりと開いた。声をかけても反応はなく、電気のついていない昼間でも薄暗い部屋へとはいる。

 説明書をろくに見ずに作って少し歪んだ靴棚、水が溜まった食器が重なってるシンク、袋ラーメンの空袋が置きっぱなしのキッチン。いつものあいつの家。

「おい、どうしたんだよ」

 声をかけながらリビングへ続くドアを開けると、

「え?」

 何もなかった。

 テーブルも、テレビも、ベッドも、パソコンも、棚も、乱雑に積み上げられていた本やゲームも何もかもがなかった。ただ引っ越したかと思うほど、何もない床があった。玄関やキッチンは、今まで通りだったのに。

「おい、なんだそれ」

「ん?」

 足元に、紙が落ちていた。もしや手がかりになるかと思い、それを広げる。

『ドキドキさんのなぁ~~~~んでも掃除機!!!!!!!!』

 ……掃除機の説明書のようだ。みんな一瞬で興味を失って、声をかけながら他になにかないか捜索を始める。

 探している途中、手に持っていたままの"説明書"が邪魔になったので、キッチンのゴミ箱に捨てる。捨てる間際『手順を守って使ってね!!!!!!ドキドキさんとのお約束だよ!!!!!!!』との一文が目に入ったが、当然記憶に残すほどでもなく、ゴミ箱の中に消えていった。

よろしければブクマ、評価、感想などいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ