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罪袋

 罪袋はどこの家にもぶら下がっている。


 人の家にも、妖精さんの家にも、敷地内のどこかにぶらさがっている。

 罪袋はその家に住む生き物の分だけぶら下がっている。三人家族のところには三つの罪袋がある。ペットも数に入るので、例えば私のうちはお父さんとお母さんと私と猫のアンコの分の罪袋がある。

 罪袋の中にはその家の住人が犯した罪について書かれた紙が一枚入っている。内容は日替わりで、同じ人の罪袋でも、ある日は「他の家族が買ってきたおやつを一つだけこっそり食べてしまった」といったかわいいものだったり、「○○年に詐欺をして✕✕万稼いだ」というような本物の罪だったりするときもある。罪ならなんでもいいようだ。

 罪袋が下がっている場所は本当にいろいろで、家の天井からぶら下がっているときもあれば、敷地内の樹木にぶら下がっているときもあるし、玄関先にあることもある。ただ、全ての住人の罪袋は一ヶ所に固まっていて、お父さんのは家の中に、お母さんのは軒先に、息子のはガレージに、ペットのは地面に、といったようなことはない。


 まだアパートに引っ越す前のときの話だ。

(あ……)

 近所の家にも罪袋はぶら下がっている。そこの家は庭の柿の木の枝先でゆらゆらと揺れているのだ。

 疑問ができたので、家に帰ってきたらお母さんに聞いてみた。お母さんはなんでも知っているのだ。

「ねえお母さん、あそこの水色の屋根の家って、誰か引っ越してきたりした?」

「? 別にそんなことないわよ。ずっと若い夫婦が二人で暮らしてるの。親からお家を貰ったらしいわよ。いいわよねー実家がお金持ちって。それだけじゃないの。あそこはね……」

「へえ、すごいね」

 お母さんの話をテキトーに聞き流しつつ、考える。あそこの罪袋は、この前見たときより一つ増えていたのだ。てっきり引っ越して新しい家族がきたのかと思っていたが。

(若い夫婦なら赤ちゃんか)

 赤ちゃんができると家の住人が増えることになるので、罪袋の数も増える。

 もしくはペットを飼い始めたか。どちらにせよ、良いことだろう。お母さんの洪水のような雑談を聞き流しながら、増えた罪袋のことなどすっかり忘れていたのだ。


 数日後、家に帰ったら「ちょっとちょっと!」とお母さんが興奮しながら話しかけてきた。

「あそこの、水色の屋根の家あるでしょ?」

「うん」

「天井裏にね、ホームレスが入り込んで暮らしてたんだって。あら~~も~~! いやね~~!」


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