表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
421/548

タバコ

 友達の家に行くことにした。


 引っ越しが決まった友達が処分する服や家具の中に欲しいものがあったらくれるのだという。欲しいものを選ぶために他の友人数人とともにアパートを目指す。

 ただその友人のアパートには誰も行ったことがなく、教えられた住所をスマホに打ち込み地図アプリにしたがってよく知らない道を歩く。

「あいつんちすげーボロいらしいよ」

「へー」

 そんな会話をしながらふと住宅街の空を見上げると、近くの建物から人が降ってきた。

「えっ」

 天から降ってきたのは男であり、手にたばこを持っていた。あっという間に地に叩きつけられ、血の花を咲かせる。

「ひっ…………!」

 男はうつ伏せになって、痙攣を繰り返す。背丈は自分と同じくらい。年も自分と同じくらい。

 服も自分と同じもの。

「おい、どうしたー?」

 その場で動けなくなっている自分に気づいた友人たちが声をかけてきた。

「どうしたって、これ……!」

「これ?」

「そう、えっ」

 コンクリートで舗装された道には何もない。人も衣服も血も何もかも、そんな痕跡は一切ない。

「どうした?」

「あ……………いや、なんでもない」

 幻覚? でもリアルすぎる。そんな風に立ち尽くしたまま考えていると、「おーい」と声をかけてくる男がいた。

「なんだ近くまで来てたのか」

「なー、似たような道ばっかでお前んちわかんなくなったんだけど」

「入り組んでるからなー。まあ、すぐそこだ」

「………………………」

 友人が指す先は、本当にすぐ近くの、塀一つ向こうのボロアパート。

(あれ……さっき……)

 落ちてきたのは、あそこから。

 会話に入る気分になれずに黙っていると、友人の中の一人のヘビースモーカーが「タバコ吸えるとこある? 俺とこいつは吸うからさー」と俺の肩を掴みながら尋ねた。

「換気扇近くならいいぞ」

「ベランダは? だめ?」

「やめとけやめとけ」

 友人は首を横にする。

「古いせいかな、最近ベランダに出るとミシミシいってて危ないんだよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] 未来予知か…?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ