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夫婦一緒に

 私には霊感がある。だから、それにちなんだ頼まれごとをされることもある。


「病気で死んだから、苦しんでないか心配でなあ」

 近所のおじいさんに頼まれた。この間亡くなったおばあさんが苦しんでないかどうか視てほしいらしい。おじいさんとおばあさんはおしどり夫婦で、いつもいっしょに散歩してたり買い物したり、とても仲が良い夫婦だった。

「ニコニコしてるよ。今はもう苦しくないって」

「そうか、そりゃ良かった」


 今度はおじいさんが亡くなった。息子夫婦が孫を連れて遊びにきたら、布団の中で亡くなっていたようだ。

「季節の変わり目だからねえ」

「あのおじいさん、元々心臓が弱かったし」

 ご近所付き合いも積極的な人だったので、葬式は近所のたくさんの人が参列した。高齢ともあって、誰も何も疑問は持っていないようだ。

「ねえ、ちょっと」

 お母さんが手招きした。

「おじいさん、今どうしてる?」

「おばあさんといっしょにいるよ」

「あらまあ、いっしょに天国に行くのかしら」

 和やかな雰囲気の葬式。老人の大往生ならば当然なのかもしれない。

 でも私は知っている。朝に散歩していたおじいさんの後ろに、おばあさんの幽霊がずっと憑いていたことを。そして、おじいさんの魂を体から抜こうと、がんばって引っ張っていたのを。

 きっと、いっしょに逝きたかったんだろう。この死がその結果なのか、偶然なのかは分からないけど。

『あの世ってあるんかねえ』

『きっとありますよ。あの世でも、一緒に散歩をしましょうか』

 穏やかな葬式の中、幽霊となったおじいさんとおばあさんは、仲良く手をつないでいた。


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