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家庭科室の噂

 学校には怪談がある。美術室にでる幽霊とか、誰も触れていないのに鳴る楽器とか、そういうの。


 この高校にも七不思議はある。夕方になると触れていないのに鳴るピアノ、病死した学生の幽霊、コンクール前に事故死した生徒……ああ、あとはなんだったか。

「家庭科室のお化け」

 友達が、私に続けるように口を開いた。ああ、そうだったそうだった。

「事故死した手芸部。夜になると家庭科室に現れて裁縫してるの」

 家庭科室のお化けって、全国に山ほどあるであろう学校の怪談のなかでもあまり聞かない気がする。普通は理科室とか体育館とか音楽室じゃないだろうか。

「ねえ、行ってみようよ」

 言いだしっぺは誰だったのか、ともかく部活が終わったあとにも少し残って、みんなで家庭科室へと向かう。

「ちょっとこれ普通に怖いってー」

 夜の学校の廊下。蛍光灯が古いのか、明かりは薄く頼りないうえに、そのぼんやりとした光が余計に家庭科室の中の暗闇を強調していた。

「ええ……行くの」

「行くよ。ほら」

 友達の中でも気の強い子が、扉に手をかける。


 ガラッ


 開いた扉の先。先頭の友達が明かりをつけたあとの家庭科室は……なんの変哲もない、いつもの家庭科室だった。


*****


 学校の怪談にはおそらく関わってはいけない。『管理者』さんが監視しているからだ。

 学校の『管理者』さん。スーツを着て、頭が地球儀。いつも学校の中を歩き回って、生徒一人一人の素行を採点して手に持ったボードに書き込んでいる存在。その採点が高ければどうなるのか、低ければどうなるのか、私も知らない。

 『管理者』さんはいくつかの怪談の現場を見に行こうとする生徒にもチェックを入れる。例えば家庭科室の幽霊とか。

 学校にいる妖精さんやお化けたちによると、あの家庭科室の噂は『管理者』さんが作ったらしい。頭が地球儀でしゃべらない『管理者』さんがどうやって噂を流したのかとか、何のために噂を流したのとかは、なんにもわからない。でも、家庭科室の噂を作って流したのは『管理者』さんだというのは、学校に住み着くお化けたちに事実として語られている。

 根拠というには弱いのだろうが、『管理者』さんは家庭科室の噂を信じて、あるいは遊び半分に怪談を確かめようとした子にチェックをつける。名簿に書くのはただ一言。


 『不』


 ただそれだけ書き加える。それの真の意味を知っているのは、『管理者』さんだけだ。

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