表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
397/548

ドキドキさんの『才能をくれるマシン』!!!!だよ!!!!!!!

 ハァ~~~~イ!!!!!!! お久しぶりかな!? 初めましてかな!? ドキドキさんだよ!!!!!


 今回紹介する胸キュンなアイテムはぁ~~こぉちら!!!!

 『才能をくれるマシン』だよ!!!!! そう!!! このマッシーンは君が持っていない才能をくれるのさ! 絵の才能も! 勉強の才能も! 運動の才能も! 経営の才能も! なんでもだよ!!!!!

 でもぉ、そんなすっごいものくれるからさあ、注意点、あるんだよねぇ……。そう、このマッスィーンは、対価として"寿命"をちゅっちゅと吸っちゃうの!!! 怖いね!!!!!! 才能にもよるけど最低三年ぐらいは渡すことになるね~~~~~~。

 え? 「才能を得るために三年寿命を引き渡すも、実は残り寿命が一年で即死するオチが見える」だって? ノンノンノン!!!!! ドキドキさんはみんなに願いを叶えてもらいたいんだ! そうなる前に死んじゃうようなものは売ってないよ!!! 

 そう! なんとセーフティつき! 対価の寿命と残り寿命の差が三年以下の人にはこのマッスィーンは動きません!!!!! ただの箱!!!!!! ドキドキさんの細やかな気遣いを誉めて! 誉めて!!!


 フフフン。それで、君はこのマシンが欲しいかな?


*****


 夜中に奇妙なテレビショッピングを見た気がする。酒を飲んでいたので酔っぱらいが見た夢かと思っていたが、翌日朝にはそのテレビショッピングで見た『才能をくれるマシン』がなぜか自室のテーブルの上に乗っかっていた。

 なにかの悪戯としか思えないが、自然と俺は説明書を読み、その機械のような箱に向かって願いを呟いた。

「漫画を描く才能が欲しい」

 アシスタントになって何年だろうか。アシとしての技術は上がっていっても、肝心の漫画家としての経歴は花開かない。どこまでいっても没で没で没。一方アシスタントとしての仕事先はベテランの先生なだけあって安定していて、長い付き合いゆえにチーフとして信頼も得ていて、いっそアシスタントだけでも暮らしていけるくらいだ。

 それでも、なりたかったのは"漫画家"なのだ。だから、こんなくだらない夢想にも触れてしまう。

 機械のような箱は、なに一つ動くことはなかった。説明書だと、正式に稼働すると光輝くらしいが。

 ああ、そうだ。誰かの凝った悪戯に決まっている。こんなもの……動くわけがない。

 さて、そろそろ仕事先の時間だ。準備をしよう。

『……でここに逃げる人たちを。スーツ姿の若い人たちを、五人か六人くらい』

「はい」

 昨今の様々な事情により、今はオンラインで通話しながらの仕事になっている。先生もアシスタントも、みんな自宅での仕事だ。

『そういえばさ、みんな健康診断とかやってる?』

「? いえ……」

『世の中が落ち着いたら、お金出すからみんなで行ってきなよ。この業界、不摂生で倒れるやつ多いからさ』

「どうしたんですか急に」

『それがさあ、今井先生のとこのチーフアシさん、脳梗塞だっけ? あれで急に倒れちゃったらしくて』

「ええ……」

『幸い病院が近かったからなんとかなったけど、一応俺のところもみんな診てもらおうと思ってね。お金は俺が出すから遠慮とかしないで受けて』

 先生のはからいに、みんな喜ぶ。そこからたしかに腰がー、肩がー、というよくある話になった。

 自分は静かに、仕事をする。


 ━━━━そう! なんとセーフティつき! 対価の寿命と残り寿命の差が三年以下の人にはこのマッスィーンは動きません!!!!! ただの箱!!!!!! ドキドキさんの細やかな気遣いを誉めて! 誉めて!!!


 昨夜見たかもしれない、真夜中のテレビショッピングでの戯れ事は……忘れることにした。夢だ、そう、夢に決まっている……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] ま、まあ、漫画家としてのセンスが絶望的になくて必要な寿命が50年くらいなのかもしれないし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ