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ぽきん
風が吹く。ぽきんぽきんと音がする。
ぽきんぽきん
ぽきんぽきん
遠くで木の枝が折れる音。しかしバス停でバスを待っている今、肌に感じるのは緩い風。こんな柔らかな風で折れるなんて、どんなにか細く頼りない枝なのだろう。
風が少し強くなる。
ぽきんぽきん
ぽきんぽきん
軽快な音。小枝が折れるような音。けれど、視界に入ったのは少し離れた位置にある木の、風で折れるとは思えない太い枝が、ぽっきりと折れる姿。それがまるで小枝が折れるときのような軽快な音を立てて真っ二つになり、地面に落ちる。
風が強くなる。
ぽきんぽきん
ぽきんぽきん
軽い音を立てていろんな物が折れていく。木が折れる。鉄の柵が折れる。近くにいた野良の動物の首が折れる。ぽきんぽきんと、ありえないほど軽快な音を立てて。
「………………っ!」
逃げた。"折れる"ゾーンがどんどん近づいてくる。もうバスなんてどうでもいい。
風がもっと強くなる。
ぽきん




