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小説■になロロロロ■ロロう

 小説を書き始めて、投稿サイトに載せ始めた。


 毎日投稿しているけれど、なかなかPVは上がっていかない。良い内容でもそもそも見られなければ意味がない。良い方法はないかと検索をして、いろいろ勉強した。予約投稿は止めて、人が多い時間に投稿したり、人気のキーワードをつけてみたり、あらすじとタイトルを変更したり、小説の内容以外にも気を遣うようになった。

 その甲斐あって、PVは伸びてきて、ブックマークも少しされるようになってきた。けどまだまだ足りない。もっともっと、ブックマークは欲しいし評価は欲しいし、コメントも欲しい。ランキングの上位にもなりたい。けど不正には手を染めたくない。試行錯誤する日々だった。

「ん?」

 何気なく自分の作品を読み返したら、妙なことに気付いた。文章が、変わっている。

 文章が示す内容自体に大きな変化はないが、説明のせいで長くなるのはしょうがないと諦めていた部分が、すっきりと分かりやすくまとめられていた。

「……酔ってたときにやったのかな」

 ブックマークやコメントが増えてきたのはこの頃だった。

 一話から順番に、話の筋は崩さず文章が次々と改訂されていった。そのおかげか今までは一話や二話で離れていた読者が続きを読むようになり、PVやユニークやブックマークやコメントも大いに増えた。

 アカウントのパスは誰にも教えてない。けどいつの間にか文章が改められていて、それに呼応するかのように読者が増えた。最初は不気味に思ってた私も、次々と増えていくコメントに気を良くして「まあいいか」と放置していった。


*****


 まただ。また記憶がない。目の前にはパソコンに表示される原稿データ。

 私は投稿サイトをきっかけに作品が書籍化し、話題になり、次々と続刊を出し漫画化アニメ化映画化ドラマ化も次々と成功した人気作家──らしい。

 もはや、知らないうちに作品の改訂がされていたというレベルではなくなった。最初はそれだけだったが徐々に改訂される文章の量が増えていき、ついに一切書いた覚えがない作品そのものが投稿されるようになった。

 その頃になると日常生活で記憶を失うことも増えてきた。ふと気がつけば時間が飛んでいて、原稿ができあがっているのだ。それだけではなく、コメント返信や、編集さんとのやりとりまで終わっている。

 十年経ち、完全に小説家となった今は、記憶があるのは一日のうちのほんの数時間だけ。大半は記憶を失い、それに伴って、作品が出来上がり、宣伝用のSNSは更新され、読者や作家仲間との交流がなされている。

 携帯が鳴った。

『先生、新作ですがアニメ化の話がきてまして────』


 ああ、また「私」の時間が減るのだろう。

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