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おもちゃ(立ち入り禁止)

 むかしむかし、とてもむかしの話です。

 空の上にいた神様は、毎日を楽しく過ごすためにおもちゃをたくさん作りました。たくさんたくさん作りました。

 失敗したものや出来が気に入らないもの、作るときに出来た破片がたくさん溜まったので、神様はひとまずそれらを全て、空いているおもちゃ箱へ全部しまいました。

 しかしあるとき、神様はうっかりおもちゃ箱をひっくり返してしまい、中に入れていら"それら"はバラバラとなって地上に降り注ぎました。あっという間に雲の下へと落ちていき、もはや神様でもどこにいってしまったかわかりません。

 神様は、召し使いに全て探しだして回収するように命じました。


 そして今に至ります。


*****


 立ち入り禁止の看板がありました。

 それは神様がうっかり落としてしまった失敗作のおもちゃです。生き物がこの立ち入り禁止の看板を見ると、その看板の向こうへはけっして行こうとしません。

 また、看板の向こうの景色も、看板の前の景色と同様ものであると錯覚する効果があり、実際の看板の向こうを観測することはできません。

 この立ち入り禁止の看板には欠点がありました。侵入ができないですが、最初から看板の向こうにいた生物も看板を越えることができなくなり、また看板を越えようという意思もなくなります。

 看板は特に指定されていなければ、看板が立っている位置を端として、直径◼️◼️kmが禁止区域となります。看板が見えない場所でも、禁止区域を越える意思をなくす、禁止区域内部の様子がわからなくなるという効果があります。

 看板は、天から山へと落下しました。自然と、*****山の一部は禁止区域となりました。

 看板が落下して、禁止区域となったエリアには当然野生の生き物がおり、その中にたくさんのカエルがいました。

 禁止区域になろうがカエルに特に影響はなく、いつもの通りに過ごしていました。

 しかしある日、突然変異のカエルが産まれました。これは禁止区域だからということではなく、ただのDNAの悪戯でした。賢く道具も使うカエルの遺伝子はどんどん引き継がれていき、カエルはどんどんと賢くなっていき、やがて知能面での*****山の覇者となりました。

 どのくらい賢いのかというと、数字の0の概念を理解し、火を使い、道具を使い、鉄を加工し、立派な文明を築き上げていきました。

 カエルは家を建て、主食である虫の繁殖をし、どんどん生活が豊かになっていきました。やがて機械工学が発展していき、ますますカエルの世界は豊かになっていきました。

 しかし禁止区域の中にはカエルが生息する水場が複数あり、やがて領土争いが起きるようになりました。三年に渡る大戦争は繰り返してはならぬ悲劇として歴史に刻まれましたが、戦争によって科学は発展していき、それはそれは豊かになっていきました。医療も盛んになり、寿命はおおいに伸びました。

 でも、誰も禁止区域にを出ようとはしません。看板の機能はしっかりと働いていました。カエルは閉じた世界で進化していきました。

 その過程でまた戦争が起こり、化学兵器などの進化した兵器の放ち合いになりました。

 そして、核が投下されました。

 互いに核を打ち合ってボロボロになり、土も水も汚れ、やがて厳しい冬がきて、進化したカエルは全て死んでしまいました。

 でも、禁止区域の外の生き物、人間はそんなことはわかりません。

「ありゃ、立ち入り禁止か」

 禁止区域に人間が近づきました。

「道間違えたな」

 そしてあっさり帰っていきました。彼には看板の向こうには、ただの豊かな緑が広がっているように見えたでしょう。実際は、核によりボロボロの植物、死骸、朽ちたカエル文明が◼️◼️kmにわたって存在します。

「ん?」

 先ほど禁止区域を前にして、道を引き返した男性が、今まさに先ほどの自分と同じように看板のほうへと向かおうとしている青年を見つけました。 

 青年は髪も服もなにもかも真っ白です。山を登る姿ではありません。

「おい、こっち行き止まりだぞ」

「ええ、理解しています」

 青年は表情ひとつ変えずに答えました。

「仕事ですので」

 そして青年は、山の道をずんずんと進んでいきました。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 財団感が強い
[一言] 今更だけどおもちゃシリーズってSCP味ある
[一言] 回収班…白い動物シリーズの中には人間型もいるのね
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