トモコちゃん/少女
不動くんからお化けのトモコちゃんの話を聞いたが、私が知っているトモコちゃんはちょっと違う。
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トモコちゃんには悪いトモコちゃんと良いトモコちゃんがいるのだ。
悪いトモコちゃんはさみしい子なので、友達がいない子をあの世に連れていってしまう。
良いトモコちゃんは友達がいない子をトモコちゃんの家に連れていってくれておもてなしをしてくれる。トモコちゃんの家は大きくてきれいなお家で、ゲームもおもちゃもおかしもいっぱいあって、まるで天国のようだ。
『ねえ、いっしょに遊びましょう。きっとそのほうが楽しいわ』
そう声をかけてきて連れていくけれど、連れていかれた子はちゃんと夕方に帰してくれる。
だから、良いトモコちゃんと呼ばれている。
『でもねえ、ふふ、行かないほうがいいわよ』
幼稚園のとき、知り合いの妖精さんに良いトモコちゃんの話をしたら、そう言われたのだ。
「どうして?」
『あの子が声をかけるのは子供なの。でも子供が成長して大きくなると、声をかけてこなくなるの』
「…………」
『でもね、大人になって、仕事とか恋愛とか人間関係とかで辛くなったときにだけ、あの子は再び現れて声をかけるの』
「なんて?」
『昔といっしょよ。『いっしょに遊びましょう』って。そして連れていくの。
そこから戻ってきた大人なんて聞いたことないわ』
「大人の人がどうなるのか、誰も知らないの?」
『ええ。もしかしたら天国のような生活で戻りたくないかもしれないし、それとも……ふふふ』
「……………」
『それで、あなたはあの子と遊んだことがあるの?』
「一回だけ、あるよ」
『そう』
妖精さんは、にんまりと笑う。
『じゃああなたが大人になって辛くて挫けそうで、そしてそんなさみしい心を慰めてくれる友達がいないとき、あの子はまたやってくるわ。そうして子供のときのように『遊びましょう』と甘い声をかけるの。
そのときは、よく考えることね………ふふふふ………』
「………………」
妖精さんは、笑っていた。
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妖精さんの話の通りなら、トモコちゃんはさみしい大人のところにもやってくるようだ。
でも逆に言えば、将来私が大人になって何かで辛くなったときに慰めてくれる、そんな友達はできていればトモコちゃんはやってこないのだ。
……そんな友達、できるのだろうか……不動くんがいるから大丈夫だろうか……。




