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喫煙可

 今の世の中には珍しく、このエリアには喫煙可と書かれてるスペースがある。


 そこはビルとビルの間、そして奥の空き家の塀に囲まれたどん詰まり。近くに喫煙スペースもなく喫煙者には厳しい世の中のせいか、そこには自然と喫煙者たちが集まるようになった。

 ビルとビルの間の奥のせいか、大通りからは意識してそこを見ようとしてもよく見えない。わかるのはもくもくとした薄い煙がたっていることと、ぼんやりとしたスマホの明かりが見えるだけ。

(あ、また……)

 大通りの近くを歩いているとたまに"それ"がビルとビルの屋上を飛び跳ねて移動しているのを見るときがある。

 黒い球体に、その前面を覆う大きな目。足が一本生えていて、大きな爪がついた鳥の足のお化け。

 脚力だけで高所を自由に跳ね回って鳥を狩り、ときには地上に降りて猫や野良の子犬を狙う。

 人間を襲ったことは見たことないが、ベビーカーに乗せられた赤ちゃんを少し離れたところからじっと見つめていたことがある。

 そんなお化けは、大通りの向こう側には行こうとしない。いや、昔はそちらにもいたのだが、喫煙者スペースが出来てからすっかり行かなくなった。

 そのお化けが地上に降りて赤ん坊を見つめていたとき、歩きタバコの煙を浴びて奇声を上げながら一瞬で高所に移動していったことがある。きっとタバコの煙が大嫌いなのだろう。古来よりタバコの煙は化け物が嫌がるなんて記述を見たことがあるが、もしかしたらそれは正しいのかもしれない。

 喫煙所から立ち上がる紫煙を、ときどきそのお化けが憎々しげに見つめているが、それでもそこに近づくことは出来ずに、プイッとそっぽを向いて反対方向に飛び跳ねていくのだ。

(……もしかして、私以外にも"視える人"がいて、喫煙所を作ったのかな)

 そんな仲間の幻想を見ているうちに、また喫煙所から細い煙が一本増えて天へと伸びていった。

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