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誕生日パーティーのあとに

 不動くんのお友達主催で、誕生日パーティーをしたらしい。


「楽しかった?」

『おう! 待ち合わせからすごかった!』

「待ち合わせ?」

『あれだよ! フラッシュモブ!!! すげーよ!』

「……感動するかんじ?」

『おう! すごかった!』

 Skypeの向こう側から聞こえる声は無邪気で楽しそうだ。

 そうか。フラッシュモブを純粋に楽しめるほうのタイプの人間か。不動くんとの感覚の解離なんて今まで何度も感じてきたが、今までで一番の解離を感じた。もちろん素直にそういうサプライズを楽しめるほうが世の中を渡りやすくて良いのだが。

『そのあとパーティーやった』

「パーティーってどこで? お家?」

『いや、ほら、駅前のカラオケの……』

 店名を告げられた。私も行ったことがある駅前のカラオケだ。一人で。

 ……あそこかあ。普通の部屋はいいけど、もし大部屋だったら……。

「……ああ、パーティールームとかで遊ぶかんじ?」

『そうそう』

「あそこ、誕生月の人限定のメニューとかあるよね」

『あー、それ食べた食べた。うまかったぜスペシャル旨辛チキン。あそこチェーンのカラオケのわりに料理うまいよなー』

「ハニトーもあるよね。気になってるんだけど、食べた?」

『それも食べた~』

 雑談をして、Skypeを終える。そういえば、最近カラオケに行ってないなと思う。


 翌日、一人でそのカラオケに行ってみた。二階にあがって、少人数用の狭い小部屋に入ろうとする。

 ……パーティールームが、近くにある。不動くんとの会話のなかで、いくつかある大部屋のなかでも一番奥の部屋だということは分かっている。

 不動くんには言っていないが、その部屋には幽霊がいるのだ。なぜ知っているのかというと、廊下でもうるさいカラオケ店なのに部屋の外の廊下にいるとその幽霊の陰気な文句が不思議と聞こえてくるからだ。

 昔、このカラオケ店がこのビルに入る前にここで営業していた店でいわゆるコミュ障をこじらせて首をつった自殺者の幽霊だ。ちょうど今のパーティールームの位置だったため、今そこに出現するのだ。

 事件自体はかなり昔のことらしくあまり知られていない。私も噂好きのお母さんに聞いて知ったくらいだ。

 ただ、霊障とでもいえばいいのか、その部屋は怪奇現象が多いとの噂だ。カラオケの画面が消えたり、飲み物が血の色になったりと、楽しむのを邪魔するような。

 ……いつもは聞こえてくるはずの、幽霊の陰気な文句が聞こえてこない。気になって、今は誰も使っていない大部屋の中を覗く。

 ああ、部屋の隅っこにいた。

『…………………………………………………………………』

 いつもは部屋の中央に陣取りこの世への恨みを語っているのに、今は部屋の隅で入り口に背を向けている。なんだか前に通りかかったときに見たときより明らかにしょんぼりしていて、背中が煤けている。

 まあ、いわゆる陰キャが陽キャの誕生日パーティーなんて浴びたらしょんぼりしてしまうのもしょうがないかもしれない。なんせフラッシュモブをやるレベルの陽だ。陰の者は見るだけでなんだか辛くなってくるだろう。

 とりあえずパーティールームにいるのはやめたほうがいいぞ、と心の中で思いつつ、部屋を離れて自分の部屋へと足を運んだ。

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[一言] 陽キャの溜まり場にいるからやで…
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