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妖精さんのお葬式

 ああ、なんと悲しいことだろうか。仲間がたくさん死んでしまった。


『一家全員ですって……』

『しかも三家族よ』

 村の仲間がひそひそと話している。澄みきった青空に反して、村の雰囲気は重い。当然だろう、村の仲間が不幸な事故で十人以上死んでしまったのだ。

『あの木に磔にされているのが、死因になった毒キノコだ』

『ええ? あれはいつも僕らが食べているものじゃないか』

『よく似ているが、傘の裏を見ると色が黒っぽいんだ。それが毒の証だ』

『これじゃあ間違えて食べてしまうわけだ』

 三家族でキノコ狩りをした末の中毒死。いたましい事件だ。この悲しい事件を繰り返さないためにも、件のキノコは磔とした。古来より村人を殺したものは磔と決まっているのだ。命なきキノコとはいえ扱いは変わらない。先日も村の仲間が階段から足を滑らせて亡くなったときは、階段の板を磔にして晒したのだ。

『あーあー』

 村長が壇上にあがる。みんなひそひそ話をやめて、静かになった。

『みんなも知っての通り、我らが仲間が不幸な事故により亡くなってしまった。だが悲しんでばかりはいられない。魂が迷わず天国へ導かれるように、天に届くように高らかに鎮魂歌を歌い、良き土に埋葬しなければならない』

 高らかな歌声は死者の魂を天国へと導いてくれると言うのがこの村の土着宗教の考えだ。そして魂だけではなく、体もお日様をたっぷりと浴び、お水もたっぷりとあり富んだ良き土に葬り、大地へと還すと良いとされている。

『良き土はいつものところにいたしましょう!』

『すぐに埋葬ができるよう印はつけておいています!』

『うむ、では歌おう! 高らかに、鎮魂歌を! この不幸な家族を天へと導く魂の曲を!』

 村人全員が歌い始める。それは葬式のたびに歌う歌。力強く歌うものだから、他の村の者が聞くとびっくりする。普通、鎮魂歌というのは静かなものらしい。

 だがこの村では違う。力強く高らかに、みんなで力を合わせて、天への道を繋げるのだ。


 ああ魂よ 体から離れるときがきた  

 ああ魂よ 体から離れるときがきた

 上を見よ 上を見よ

 雲よりも高く空よりも遠く

 日の光よりも神々しいそこに

 安らかなる天への入り口があるだろう


*****


 「……………………」

 歌が聞こえる。近所の妖精さんのところでお葬式があったようだ。妖精さんは歌いながら埋葬をしている。

 埋葬場所は、富んだ良き土に埋めるという考えで土地を選んでいるらしい。

「…………………畑なんだけどなあ……………………」

 どこかの家の知らない家庭菜園の隅っこ。そこで葬式は行われている。そりゃあ土がいいだろう。なんせ人間の手によって手入れがされているのだから。

「……………………いいのかなあ」

 家庭菜園の野菜は、日の光を浴びてキラキラと輝いていた。

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