表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
286/548

あたしメリーさん。今……。

 あたしメリーさん。今ごみ捨て場にいるの。


 SNSに知らないアカウントからそういう内容のメッセージが送られてきた。

「どこの……」

 ごみ捨て場とかいくらでもあるぞ、とツッコミを入れる。

「どこって、何が?」

 同棲中の彼女が後ろから覗いてくる。俺たちはお互いのスマホは見られても平気なたちなのでよくあることだ。

「知らんアカウントからよくわからんのが来た」

「イタズラ?」

「じゃねえの。多分……」

 さっさとブロックして、すぐにそのことは忘れた。


『あたしメリーさん。今タバコ屋さんの角にいるの』

 翌日、またメッセージがきた。アカウントはブロックしたはずなのに、いつの間にか元に戻っている。

「……?」

 なんかのバグか? と検索するがそれらしい報告はない。まあいいか、とまたブロックをする。

『あたしメリーさん。今あなたの家の前にいるの』

 そしてさらに翌日、またメッセージがきた。ブロックはまた外れている。

 さすがに『メリーさん』の話は有名だから知っている。だがSNSの話だっけ?と思いながら検索をすると、やはり元はメリーさんから電話がかかってくるという内容で、四回目の連絡で最後だと、GoogleとWikipediaが教えてくれた。

 ……おい、文章がWikipediaのまんまじゃねえか。手抜きか。ここは家じゃなくてアパートなんだよ。そもそもメリーさんは西洋人形を捨てたことから始まる都市伝説だが俺はそんなことしてねえよ。真面目にやれ。

 さて、Wikipedia先生によれば、ここで外に出たら『今あなたの後ろにいるの』がきて終わりとのことだ。つまり外に出なければ良い。

 いや駄目だわ。夕飯焼き肉の予約とってるんだよ。あと一時間後には家出なきゃいけないんだよ。だいたいこんなわけのわからんイタズラでなんで外に出る自由を侵害されなきゃいけないんだ。

 俺はメリーさん、もといイタズラの犯人がいやしないかと外に出てアパートの前を見渡すが、特に人がいる様子はない。馬鹿馬鹿しい、とアパートの自分の部屋に戻ると、常時マナーモードにしているはずの携帯のSNSに通知がきたことを示す軽やかな音楽が鳴った。

『あたしメリーさん。今 あなたの後ろにいるの』


 みし、と誰かが床を踏みしめたような音がした。


「ねえ」

 女の声がした。

「ねえ……どうしたの?」

「ん、いや……」

 背後から聞こえるそれは、聞きなれた彼女の声。

 ……静かに、振り返る。

「焼き肉の時間まだだけど、出掛けるの?」

「あー、いや、なんでもない」

 そこにいるのは、いつも通りの彼女の姿。黒髪のショートカットで、日焼けをしていて、ラフなかっこうをしている。

「ねえ、ちょっと頭見てくれない?」

「頭?」

「なんかやたら痒くて……腫れてたりしない? 髪が邪魔で鏡じゃよく見えなくて」

 虫にでも刺されたんだろうか。言われた通りに後頭部を見る。後頭部の髪を掻き分けると、特に腫れたりはしていなかった。

 ただ、まるで西洋人形のような金色の髪が、何本も生えてきていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] 座標バグ起きてて草
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ