こっくりさん
こっくりさんをやろう、と誘われた。
私は霊感があることを公言しているから、ときどきよく知らない子からこういうことに誘われたりする。そのたびに厄介事になったら嫌だから断っているけど、中には強引に連れて行かれてやらされることもある。
今日も、そんな日だった。放課後の空き教室に連れてこられた。
「じゃあ始めるね」
私以外の女の子は三人。机の上には五十音と鳥居が書かれた定番の紙。
「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください……」
十円玉の上に指を乗せて、これまた定番の呪文を唱える。動かない十円玉をしばし見つめていると、
バチン!
そんな音がして、部屋が真っ暗になった。放課後とはいえ、まだ外は暗くない。なのに部屋の中は真夜中のように黒一色となる。女子たちの甲高い悲鳴が重なる。
私が手探りで壁の電灯のスイッチを探り当てて点けると、そこにはいつも通りの空き教室があった。ただ、中央にある乱れた机と、うずくまる女子三人と、こっくりさんの紙だけが、さきほどが現実のことだと伝えている。
「……だから言ったでしょ、こんなことしないほうがいいって」
こっくりさんの紙をビリビリと破き、机を整える。女子たちはこんな短時間で薄いメイクが溶けるほどに泣いていた。
「みんな大丈夫? 取り憑かれてない?」
「だ、だいじょうぶ……」
「か、帰ろ? もう帰ろう?」
女子たちはそそくさと空き教室を出て行った。
そのうちの一人の背中に、『誰か』がへばりついている。それは、女子のうちの一人とそっくりだった。
『ねえ! 何!? 誰なのあんた!? なんで私の体を勝手にーーー!!!』
女子たちと『何か』はどんどん遠くへと離れていく。
私は部屋の片付けの続きをしようと振り返る。床に真っ二つになった十円玉が落ちて、夕方の光を浴びて光っていた。




