罰
そして、世界には誰もいなくなった。
『ああ、どうしましょうどうしましょう』
ここまでやるつもりはなかったのだ。ただ、だらしなく不潔な者や、生産性のない金食い虫の老人がいなくなれば、暮らしやすくなるのだろうと考えただけなのだ。
みんなみんないない。同族どころか、ヒトも、猫も、犬も、鳥も、虫も、みんな死に絶えてしまった。そこまで広がるとは思わなかった。植物はざわざわと風に揺らされ歌っているが、言葉を持たない彼らはこちらに語りかけてはこない。
『ああ……』
やってしまった。やりすぎてしまった。
全員全員、私が殺してしまったのだ。
「何をしているの?」
私には霊感がある。近所に住んでいる妖精さんが集まってなにかをしているから問いかけてみた。妖精さんは地面に魔法陣のようなものを描き、その上に一人の妖精さんが寝転がっている。
『罰だ! 罰だよ!』
『こいつは酷い大罪を犯した!』
妖精さんたちはずいぶんと怒っている。みんな一斉に怒るから何をいっているのかわからない。
「具体的に、何をしたの?」
『なんとこいつ、新種の病気を流行らしたのさ! 死者がいっぱいでたよ!』
「どうしてそんなことを?」
『だらしないやつと老人が死ねば暮らしやすくなるだとよ! なんてやつだ!』
「それで、魔法で何か罰を与えてるの?」
『ああ! 魔法で「自分が流行らした病で世界の生き物全てが死に絶えてしまったら」を疑似体験させてるのさ! こいつの体が死ぬまでの孤独だ! こいつには死すら生温い!』
わあわあと妖精さんがわめくなか、寝かされた罪人が、小さく呻いた。




