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八番目の扉
通学路に、平べったい建物がある。
どこかの会社が何かに使っているのか、作業服を着た人たちが出入りしているのは見たことがある。扉は七つあり、いつもただ静かに佇んでいる。
「…………」
ときどき。
ときどき、扉が八つに増えていることがある。まるで最初からそうであったかのように。八番目の扉は他のものよりも古く、汚れていて、どこか寒々しい気配がして、なんだか怖い。
そして、八番目の扉があるときだけは、作業着を着た人たちが出入りしているのを見たことがない。
(またできてる……)
その日も、できていた。薄汚れた、八番目の扉。別にじろじろ見るものでもないので、一瞬視線を向けたあとはまた前を見て学校へと歩みを進める。
きい
扉が開く音がした。なぜか、八番目の扉が開いたものだと確信が持てた。
見たい。
見たくない。
見たい。
見たくない。
なぜか見たくて、確認したくて、でも同時に、見たら嫌な予感がして、体が見るのを拒否をしている。
「…………っ!」
動けない。
ざっざっざっ
誰かの足音がする。それは、八番目の扉から。




