SNSの写真
寒風が吹く冬の道、同じクラスの不動くんから相談をされた。
「二ヶ月前に、ツイッターで仲良くなったやつがいるんだよ」
同じ県に住んでいて、同じ地元出身のバンドが好きという繋がりだったようだ。
「そいつけっこー写真あげるんだけどさ、どうも仙台に住んでるみたいで場所が分かっちまうんだよ。ここあの公園じゃんとか、駅前のイオンじゃんとか、駅の東口だなとか」
「このご時世に不注意だね」
「そうなんだよ。それとなく注意というか、もうちょっと背景スタンプで隠したらみたいなことは言ったんだけど本人全然気にしてなかった」
最近は一般人でも身元がバレないよう加工することが重要視されていることだが、気にしない人はまったく気にしないことでもある。
「んでさー、どうも近所っぽかったんだよ。そいつの家。近くの公園の遊具写ってたからわかった」
「へえ」
「でさ、なんとなく好奇心で家の位置特定しちゃったし、行ってみちゃった」
「……………………」
そういえば、この子はストーカー癖があった。最近はいっしょにいることが多いが忘れていたが。その辺の倫理観はゆるいだろう。
「ダメだよ……」
「うん、まあ、つい。でも何もする気なかったし、チラ見したら満足するつもりだったんだけどさ……」
不動くんが足を止める。
「家さあ、アレなんだよな」
炭の塊があった。
家と空き地とアパートが混在する住宅街。その中に、黒い残骸が放置されている場所があった。
「……火事?」
「おう。三ヶ月前に焼けたんだ。原因は漏電だったかな」
「ここが、そのお友達の家?」
「うん」
頷く。そしてスマホを取り出して画像を見せてきた。
「これがそのダチがあげてた自分の部屋の写真。ほら、窓から見える景色を考えると……」
「あー……たしかにここだけど……」
角度や遮蔽物を考えると、他のアパートや家からだと考えるのは無理がある。間違いなく、この焼け落ちた家の住人のものだろう。
「黙っておこうよ。家が全焼なんて重い話だし、きっとツイッターで報告しにくかったんじゃないかな」
「今も写真アップしてるんだよ」
渋い顔をしている。
「今の家の写真とかならいいよ。この家が健在だったころの写真あげつづけてんの。何もなかったみてえに」
「…………」
「写真見て違和感あったんだよ。なんか妙に薄着だなーとかさ。秋以前の写真しかねえなら当然だよな」
「…………」
「なあ……そもそもこいつは、生きてんのか? 死んでんのか?」
「さすがにツイッターのアカウント見ただけじゃ分からないかな」
不動くんのスマホに表示された、その人のツイッターのタイムライン。ありふれた日常が、文と写真で綴られている。写真の背景を見ればわかる。それが、この家が焼ける前に撮られたものばかりだと。
「でもどちらにせよ、悲しいことなんだと思うよ」
「だよなあ……」
これからどう接しようか、と珍しく美形の眉間に皺を寄せて考えていた。




