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ギロチン通り

 ギロチン通り、とあだ名されている場所がある。


 それは細くて暗い路地裏。そこに行くと、ギロチンをかけられるという。

「なんだよギロチンって……」

「行けば分かるって」

 友達にその手前まで連れてこられた。見たところただの薄暗くて狭い道だ。上を見上げても特におかしなものがない。

「ほんっとーにここの道入るだけでいいのか?」

「おうよ。男に二言はねえ」

 友人から借りた漫画をコーヒーでびしょびしょにしてしまった。汚されたら嫌だから貸したくないと言われたのを頼み込んで貸して貰ったのに、である。

 弁償は当然として、罰としてこのギロチン通りに連れてこられたのだ。

(絶対なんかあるのは確実なんだが……)

 薄暗い路地をそろりそろりと歩く。両サイドの建物の窓がない壁ですらどこか薄気味悪い。

 

 どんっ


 分かった。感じた。

 まさしくギロチンを受けたような、首への衝撃を感じた。

「ひいいっ!」

 殺される。殺されてしまう。俺は情けない悲鳴を上げて、走ってそこから抜け出した。


「あっはっは」

「いくらなんでもやりすぎだろ!」

「いやいや、俺はなんもやってねえよ。

 あそこはな、昔からそうなんだ」

 ギロチン通り。両サイドを高い建物で挟まれた細い路地。そこを通ると、なぜかギロチンを受けたときのように、首に何かしらの衝撃がくる。しかし、何か落とされたわけではなく、誰かに襲われたわけでもなく。

「あそこ通るとな、必ずそうなんだ。誰かのたちの悪い悪戯かってんで、監視カメラつけたりしたらしいけど全然ダメ。誰もいない何もないのに、首だけが痛くなる。ちなみに“ここは昔処刑場で……“みたいなのもないぞ。ここは昔から店とか宿とかあった通りだし」

「なんだよそれ……」

「通れりゃ近道なんだがなー。誰も通らんよ」 

 まさか近くにこんな恐ろしい場所があったなんて。絶対にここは通らないことにしよう。

 ……あと、こいつは怒らせないようにしよう。


「こんにちは、ギロチンの妖精さん」

『あら、ヒトの子ね。こんにちは』

 私には霊感がある。霊感があるので、妖精さんとも会話ができる。ギロチンの妖精さんはこのギロチン通りの犯人とも言える、親指くらいのサイズの妖精さんだ。

「なんでここにギロチンを仕掛けるの?」

『ここは狭いからね、この幅なら、私でも適したギロチンが作れるわ』

「目的ってあるの?」

『ええ。私は処刑場で働いているの。ギロチン作りをまかされているわ。とっても上手く作れるのよ! もっともっと良いギロチンを作りたいから練習をしているの! もちろん今のままのギロチンでも職務は全うできるけど、職人としての向上心ってやつね!』

 ニコニコと、答えてくれた。

『最初は同胞を処刑するくらいしかできなかった。でもちゃんと努力して、勉強して、試作を重ねたの。そして少しずつ改良されていった。ネズミを殺せたわ。猫を殺せたわ。犬を殺せたわ』

 フフ、と。

『次はヒトよ。きっとやってみせるわ』

「……そう。がんばりやさんだね」

『ありがとう。ふふ、ここは通らない方がいいわよ?』

 そうする、と返事して、私は明るい商店街へと戻っていった。

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