夢のお告げ
金だ。金が欲しい。
別に何かするのに必要なわけではない。強いて言うなら毎日会社に行かずに済むような大金が欲しい。宝くじの店を見るたびに、ウン億円当たって人生一発逆転したいなと思う。
(高層マンションの最上階とかでなくていいんだ……そこそこキレイで広いマンションで……毎日ゆったり過ごして週一で近所の店に外食するような……)
そんな意味のないことをつらつらと考える日々。
そんなある日の夜、夢を見た。自分の部屋のテーブルの上に白い狐が座っている夢。狐をどかそうとするとひらりと手の中から逃れれられた。えらく長い尻尾は近くにあったペンを握り、器用にもキャップを外して近くのメモ用紙に何かを書き始めた。
この時点で夢であることに気がついていた。だって尻尾でそんなことができるわけはない。
ぼんやりと眺めていると、それが数字の羅列を記していることに気付いた。
『こんなことってあるか!?』
私には霊感がある。なので、たまにフラリと山から降りてくる化け狐さんに絡まれることがある。
『ロト6! キャリーオーバー! 10億円!』
吠えている。朝からうるさい。
『僕ァ、テキトーな数字を書いてもしやお告げか!?なんてバカなこと考えて宝くじを買って落胆する人間が見たかったんだ! 本当に当たるとかナシだろ!』
「……………」
『せめて大金に狂って人生破綻させてくれたら面白かったのに仕事辞めたあとはマンション買ってあとは地味ーーーーに暮らしてるんだ! なんでだよ! 使い切れよ! 路頭に迷ってくれ!』
性格悪いなあ、と思いつつも無視して家を出る。学校に行かなければ。
『なんだよ無視かよ! 人間っていうのは意地が悪いなあもう!』
プンプンと怒りながらどこかに消えていった。また別の人を化かしに行ったのだろうか。
「宝くじかあ……」
当たれば、人と会わずに生活できるのだろうか。少し薄暗い部屋で、ぼんやりと過ごすことができるのだろうか。
そんなことを考えながら、通学する。道路には、先日妖精さんたちの間で争いがあったため、ネズミ大の、内臓をまき散らした妖精さんの遺体がところどころに転がっている。
(…………)
爽やかな青空の反面、朝から鬱々としながら通学路を歩いて行った。