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人体一部火葬

 人体一部火葬、というものがある。


 それは事故や手術で手や足を失った人が、手足だけを火葬するものだ。近所の葬儀屋でそれを受け付けているせいか、火葬場の近くを通るとたまに手だけ、足だけの幽霊が視える。

 それらは最初は道の片隅で蠢いていただけだが、徐々に仲間同士一緒に交流をし始めた。最初に誰かの両腕と誰かの右足が行動をともにするようになり、次に左足が仲間になり、両腕に欠けていた左手の小指と薬指も、いつの間にか誰かのものが合流していた。

 あと足りないのは、胴体と頭だけだ。

「…………」

 とある日の帰り道、手足のお化けたちを視た。お化けたちは自動ドアの前にいて、誰かがその建物へ入ろうとして自動ドアが開いた瞬間に、中へと滑り込んでいった。

 お化けだから、すり抜けられると思うのだが。律儀だなあと思った。

「何してんの?」

「お化けがいるなって」

「まー病院の前だしな」

 そう、ここは大きな大きな総合病院の前。どんなお化けがいたっておかしくないところ。

「そういや聞いたか? ここ、あの画家が入院してるんだって」


『この方法を導入しようとしたきっかけは?』

『諦めきれなかったから、ですかね。こういう方々があるということは前にテレビ報道で見かけて知っていました。果たしてこれで以前のように描けるかは正直自信がなかったです。

 でも私は、絵が描けるならどんなものにだってすがりたかったのです』

 テレビで、ベッドの上の中年男性がインタビューに答えている。

 事故で両手足を全て失った画家。そして、視線の動きだけでパソコンを操作する技術を用いて、画家として復帰したことで今話題になっている。

「すごいわねえ」

 一緒にテレビを見ているお母さんは、のほほんとそんなことを言っている。私もすごいと思う。思うが、別のところに自然が行く。

 あの手足のお化けたちが、画家に纏わり付いている。腕のところに腕のお化けが貼り付いたりしていると、まるで腕が本当に存在しているみたいだ。

 腕のお化けの手が、画家の首を絞めるような真似をしている。

 もしあの画家が死んだら、きっとあのお化けは完全な人の形になるのだろう。


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