誰かいる
部屋に誰かいるような気がする。
一人暮らし。ペットも、合鍵を持っているような人もいない。なのに、引っ越して以来そんな気がして落ち着かないのだ。
「監視カメラとかつけてみたら? ほんとにいたりして」
「ウェブカメラとかいうのやってみたけど、誰も出入りしてなかったよ。でもなんか変な感じはするんだよね……」
「うーん、たしかに落ち着かないよねここ」
友達に相談すると、同意された。やはりこの部屋はおかしい。
「盗聴器とかあったりして」
「引っ越したばかりで?」
「前の部屋ではこんなことなかったでしょ? むしろ前の住人狙いでつけたやつが残ってるとかさ」
ネットで検索して、盗聴器がつけられやすい場所を探してみた。コンセントのカバーの裏なんか、取り付けられていることが多いらしい。
「天井裏も見てみるよ」
そう言って、友達は押し入れの中へと入り込んでいった。
警察。パトカー。野次馬たち。そしてげんなりとしている私たち。
「寒さを凌ごうとホームレスが入り込んだんだろうね」
警官はそう言っていた。
天井裏にあったもの。毛布。薄い布団。ナイフ。スプーン。箸。乾き物の食べ物。リュック。缶詰。酒瓶。小銭。ボロ布同然の服。
そして、ミイラ化した年寄りの死体。
「………どうするよ」
「………しばらく、泊まらせて」
ああ、また物件探さないとなあ、と死んだ目で曇り空を見上げた。