河原の石
河原の石は持ち帰ってはいけない。
昔、漫画でそういう内容の文章を読んだことがある。曰く、水辺は霊が近寄りやすく、石に霊が宿っていることがあるという。
その漫画独自の設定ではなく、オカルト界では昔からそう囁かれているそうだ。
だから、持ち帰った。
幽霊なんてものが本当にいるとしたら、ぜひお目にかかりたいね、というどこか上から目線な気持ちで。
ざりっ ざりっ
ざりっ ざりっ
夜になると、そんな音がする。何かが這いずり回っている音。一人暮らしだ。ペットはいない。
そしてそれは、床を見ても何も見えないのに、鏡を覗き込んだときだけ、床を這い回る姿を捉えることができる。
ざりっ ざりっ
ざりっ ざりっ
長い髪。女だ。白い洋服を着ている。
そして、目も、鼻も、口も、顔のパーツが位置も角度も何もかもが全てめちゃくちゃに、顔面の中央に集められていた。白くて細い腕にはふきでもののようなぶつぶつが浮かび上がり、そしてなぜか棘のようなものがピン、と立っている。
ざりっ ざりっ
ざりっ ざりっ
拾ってきた石は引き出しの中に入れておいたはずなのに、なぜか行方不明だ。
自分は『何』の幽霊を連れ去ってきてしまった?