「幸せ」
私には霊感がある。だから、お化けや幽霊、妖精さんともお話しが出来る。
町外れにある大木の洞には、物作りの妖精さんがいる。いつも何かを作っていて、今日は四角い型に虹色の粘液を流し込み、扇で冷ましていた。
「こんにちは、物作りの妖精さん」
『おや人間のお嬢さん、こんにちは』
「今日は何を作っているの?」
物作りの妖精さんはいろいろ作る。この前は寝ぼすけさんでも起きられるとても大きな音の目覚ましを、その前は手が不自由でも使える櫛を、更にその前はどんなに興奮していてもすぐに眠れる睡眠薬を作っていた。
『今日はね、「幸せ」を作っていたよ』
「幸せ?」
『これを食べるとね、アラびっくり! 何があってもずっと幸せでいられるんだ!』
「なんだかすごいね」
『すごいだろう。見てご覧よ』
指されたほうを見ると、首のないネズミの死体。首は少し離れた場所にあった。幸せそうな顔で。
『首を切っていても、幸せそうだったよ! 成功さ!』
「…………………………………」
『あんたもどうだい?』
「うーん、やめとこうかな」
『そうかいそうかい』
無理強いはしないよ、とまた「幸せ」に向き直る。
『でも辛くなったらおいでよ! 俺が永遠の幸せに導いてやるから!』
ニパッと、子供のような輝かしい笑顔で、そう言っていた。