妖精式弔い
妖精も、死者が出たら弔いをする。
「へえ、土に埋めたり焼いたりしないんだね」
『ええ。うちの種族はね。
死んだ人に対して、好きとか嫌いとかあるでしょ? それによって埋葬も力を入れたり手を抜いたりして、天国に行く距離に差が生まれてしまうと信じられているの。
だから、自然に任せることにしたの』
「そういう意図ではないだろうけど、人間も、鳥葬とか風葬とかあるね。鳥に食べさせたり、朽ちるままに任せたり」
『まあそうなの! ならばさしずめ、うちのは「人葬」かしら!』
「三島はこっち通らねえよな」
不動くんが指した道、ここを通れば少しばかり近道になる。それは知っている。絶対に行かないけれど。
「気持ち悪いから嫌」
「なんでさ。お化けとかいるの?」
「………………」
霊感がない不動くんは不思議そうだ。
歩道橋の上から投げ捨てられて、車でぺしゃんこにされた妖精さんの死体がいっぱいある。普通に内臓とか出てるから、視たくない。そのうち風化してなくなるが、そうなる前に新しい遺体が来るのでいつまでもいつまでも、あの道には死体が積み重ねられている。
死体の目がじっとこちらを見つめている。
「………あっちいこ。あっち」
「お、おう」
不動くんを無理矢理引きずって、私は遠回りの道を選んだ。