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 霊能者にすごく上手な加工を施した偽物の心霊写真を見せたら、本物の心霊写真だと認定された、という話をネットで読んだ。


 面白そうだし、写真の加工も得意だ。さっそく時間をかけて精巧な「心霊写真」を二枚作り上げた。一枚目は首がない幽霊が写っているもの。二枚目は生きている人の足がなぜか消失しているもの。そしてそれに自宅近くの林の、木がたくさんありすぎて日の当たらなく、そのせいで雰囲気が暗い場所で普通に撮ってきた、変なものは写ってないけど雰囲気だけは酷く不気味な三枚目。

 バリエーション豊かな三枚を、さっそく怖がるふりをしながら、クラスの「霊感少女」である三島に見せる。

「…………」

 訝しげな顔をして、少しばかり心霊写真もどきを見つめた。

「あのさ」

「うん」

「私も人間なんだよね」

「うん?」

「ただの興味本位で試されたりするの、普通に不愉快なんだけど」

「……………………………」

 三島はとん、とん、と一枚ずつ指で突いていく。

「これとこれは加工。こっちは雰囲気悪い場所でただテキトーに撮影しただけ。違う?」

「……………」

 正鵠を射られてなんと答えるべきか迷っていると、大きな足音が急速に近づいてきた。

「なんか今三島が馬鹿にされたような気配がしたぞ~~~? ん~~~?」

 同じクラスの不動だ。なんで来るんだよ。絶対にややこしくなるから体育館にバスケしに行ったときを狙ったのに。

「打ち首! 打ち首にしようぜ! 打ち首! 嘘つきは打ち首!」

 あっという間に机の上に組み伏せられ、定規を首に当てられる。痛い。

「その辺にしておけば」

 三島はなんら動揺することなく不動を制した。

「え~? 打ち首チャンスじゃん」

「しなくていいよ。経緯もなんも知らない子が首をつっこむものじゃないの」

「へいへい」

 あっさりの解放されたがそれでも体のあちこちが痛い。間抜けな顛末に、周囲で見ていたクラスメイトたちの嘲るような視線を浴びながら席に戻ろうとすると「ねえ」と三島が声をかけてきた。

「私、別に優しくないから」

「ごめんなさいしろや。アアン?」

 ごめんなさい、と小さく謝って、席に戻る。


*******


「あんにゃろシバいてやろうか。二度とこういうことができねえように。物理的に」

「いらない」

 帰り道、あの心霊写真の話題になった。不動くんはニコニコしてるが、その気になったら本当に手加減なしでやれる人なので、困った子である。

「二枚は上手な加工だったけど、そんな素敵技術はもっとまともなことに使えってんだ」

「三枚目は? あの林のやつ」

「あれは加工なしだろ? でも雰囲気はいかにもなんかヤバそうで良かったな」

「……そうだね」

 不動くんにはそう見えていたのなら、撮影した本人にもそう見えているのだろう。

「………」

 見た瞬間にはわかっていた。あれは、霊感がないとわからないタイプのやつだと。


******


「熱下がったら言いなさいよ」

「うん……」

 母さんが出ていく。自室に一人ぼっちになった。最近熱が続いて、しばらく学校を休むハメになっている。

 とろん、と目が重くなる。眠い。

(やだな……寝たくないな……)

 熱のせいだろうか。最近嫌な夢ばかり見る。

 眠ると、この前撮影したところと同じ、近所の林の中に立っていて、そこで化け物に追い回されるという夢を。

(なんで続けて同じ夢なんか見るんだ……)

 それに回答をくれる者は、誰もいない。


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