将来の結婚相手
カミソリと、洗面器と、水を用意した。
将来の結婚相手を見ることができることができるというおまじない。夜の十二時に、カミソリを咥えて水を張った洗面器を覗き込むと、未来の旦那様が見えるという話だ。
カチ、カチ、と時計の針が進む。あと少し。カミソリを咥えて、洗面器に水を張る。
「!」
夜中の十二時を迎え、男の人の顔のようなものが徐々にはっきりと映ってきはじめて、私は驚いてカミソリを落としてしまった。
不思議と、洗面器の水が血のような赤に染まる。
二十年後、私はお見合い相手と結婚前提で付き合っていた。別に有名な都市伝説のように、顔に大きな傷があるわけではないが。
「じゃあ、また明日ね」
「じゃあね」
デートを終えて彼と別れて夜道を一人で帰る。居酒屋のあとだからほろ酔い気分だ。
「あっ、すみません」
通行人の男の人にぶつかってしまった。大柄で、頬に大きな傷跡がある男の人。それが、何かを持っている腕を振り上げて。
そこで私の意識は終わった。
・・・・・・・
『犯人は薬物の乱用者であるとのことですが、彼が証言している、この事件のキーワードの一つである「冥婚」とはなんなのでしょうか』
『はい、冥婚とは死後結婚ともいい、死者と生者を結婚させる風習のことで────』