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いじめの報復

 私には霊感がある。


 そう公言しているから、嫌われることもある。変な子とか、痛い女とか言われるのはもう慣れた。

「痛っ……」  

 けれど、ここまでのは慣れていない。学校の私の机の中に、セロテープで固定された針が入っていたのだ。明らかに人為的なものだ。

「おいおいおいおい。大丈夫かよ」

「いや、うん、少し刺さっただけだから……」

 目敏い不動くんはすぐに駆け寄ってきて私に絆創膏を渡す。

「ったく、誰だこんなバカなことしたの!」

 私よりもよっぽど怒ってる。当然誰も名乗りはしない。結局犯人は分からないまま、朝のホームルームの時間になった。

「………」

 靴の中に画鋲がある。朝のことがあったから、警戒してて良かった。

 読書をしていたら遅くなった。帰宅部はもう帰っていて、けど部活はまだ続いてる。そんな半端な時間に帰ろうとして、下駄箱の外用の靴の中にそれを見つけたのだ。

「どうしたの?」

 女子が私の肩を叩く。同じクラスの子だ。顔はニコニコ笑っているけど、探るようなじっとりとした目に、一切の笑みはない。

「……あなたがやったの」

「なーんのこと。証拠もないのに犯人扱いはやめてほしいんだけど」

 軽く蹴られた。

「やめてよ……」

「えー、ふざけてるだけじゃん。ノリ悪いなー」

「私が不動くんに気に入られてるの、そんなに嫌?」

「…………」

 無言。図星だ。前々から、不動くんが私に絡んでくるとき怖い目で睨んでくる子だったから、いつかはこうなる気がしていた。

「私別に不動くんと付き合ってないし、ああいう馴れ馴れしい人苦手だし……。こういうのやめてほしいんだけど……」

「生意気」

 突き飛ばされて、下駄箱に体がぶつかる。

「ちょっとかわいいからって調子乗んなよ。電波女」

「いや別に……」

「それとも不動が助けてくれるって期待してる? もう帰ってるからねあいつ」

 知っている。部活に入っていない不動くんはもうとっくに帰ってる時間だ。

 助けてくれそうなのは、もっと別の人たちだ。

 十五年前に事故死した図書室の幽霊。生前友達がいなかったらしくて、話しかけたらすごく喜んでくれて、放課後ちょくちょく話してる。

 街を駆け抜ける、大きな銀色狼さん。大きな口で大きなお化けをよく食べている。休んでいるときにお茶をあげたら私に懐いてくれたのだ。

 学校の『管理者』さん。スーツを着て、頭が地球儀。いつも学校の中を歩き回って、生徒一人一人の素行を採点して手に持ったボードに書き込んでいる。口がないからしゃべらないけど、挨拶をするとお辞儀をしてくれる。

 みんなみんな私のお友達。みんなには視えない私のお友達。だから今、みんなとても怒っている。


 ぢきぢきぢきぢき……


 『管理者』さんが持っている、古いカッターの刃が出た音だ。狼さんは唸りをあげて、図書室の幽霊さんもぶつぶつ呟きながらじっとこちらを見つめている。

 みんなみんな、人間の法を守らなくていい存在。命を摘み取ることに、なんの躊躇いもない存在。法がない世界で生きるお化けたちに、容赦というものは一切ない。

「えーと……」

 けれど、私は人間だから。

 例えいじめっ子でも、目の前で無惨に死なれるのはさすがに避けたい。

「なんだよその顔。ブス」

 またお化けたちがこちらに近づいた。

 言葉一つ放つごとに地獄へ一歩進んでいる。そんなことに気付くわけがないいじめっ子をどう助けようか、私は必死で考えたのだ。

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