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温かい家庭

 私には霊感がある。だから、お化けや妖精さんたちとお話しをしたりすることもできる。


「こんにちは、桃色の妖精さん」

『こんにちは、人のお嬢さん』

 桃色の妖精さんは二丁目にある、空き家ばかりのエリアに住む妖精さんだ。髪も爪も桃色で、お花と果物が大好きな妖精さんだ。

「大荷物だね、どうしたの?」

『フフ、今日はね、孫が遊びにくるの』

「へえ、じゃあ夕飯をみんなでいっしょに食べるのかな」

『そうよ。お肉も野菜もたっぷり入ったシチューは孫の大好物なの。固いパンをシチューにとっぷりと浸すのよ。合間合間のサラダや、ベリーがたっぷりのデザートも外せないわ』

「作るの、大変そうだね」

『ええ、ええ。もちろん大変! でもとっても楽しいわ。だって、私と、おじいさんと、孫と、娘と、娘婿の楽しいパーティーだもの。

 娘たちはね、美味しいワインとパンを持ってきてくれるわ。サラダ用の野菜とデザート用のベリーはね、おじいさんと孫が家の畑で収穫してくれるの。とっても瑞々しくて美味しいわ!』

「そう。楽しいパーティーになるといいね」

『ええ、ええ! 人のお嬢さんも、良い夕食を!』

 桃色の妖精さんを見送ると、コンビニから戻ってきた不動くんが声をかけてきた。

「何? また妖精さんと話してんの?」

「うん。お孫さんが遊びに来るから夕飯はパーティーするんだって」

「へー、いいじゃんほのぼのしてて」

「良くないよ」

「なんで」

「あの妖精さん、もうボケてるから」

 妖精さんだって知能も感情もある。だから、人間と同じようにボケるのだ。

「旦那さんも娘さん一家も事故でとっくの昔に亡くなってるって他の妖精さんから聞いたよ。話す内容も毎回同じ。

 毎回毎回同じこと話すからみんなさすがに嫌になってもう誰も会話しようとしないの」

「…………」

「私はたまーに会うだけだし、聞いてもいいかなって……それだけ」

「何その俺らも年取ったら直面しそうな問題」

「だねぇ」

 長生きも良いだけじゃないね、と呟いてぼんやりと青空を眺めた。

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